平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
「都会ってすごいわよねぇ……」
リズはとぼとぼ歩き進みながら、しみじみと改めて思った。
「それでいて、あのすごく優しそうな副団長様を押しのけて、優しい上司のランキングトップに居座っている団長様か……」
しばし、じっくりと考える。
「…………それなら……、クビにはならないかも」
そこが一番重要だ。もし書類を渡す際にへまをやってしまったら、その時は今後覚えます、次は絶対に間違えませんから、と必死に頼み込んでみよう。
やがて一つの立派な扉の前に辿り着いた。獣騎士団長の執務室だ。
ああ、これまでのお使いで、ここまで敷居の高い所もなかった……と、緊張がぶり返した。心臓がドクドクし過ぎて過呼吸になりそうだ。
頭に酸素が回らない。緊張気味に素早く深呼吸したリズは、扉をノックするという一番目のコンタクトを起こすのに必死になって、ミスを一つした。
室内からの応答許可を待つ、という次の過程をうっかり飛ばしてしまったのだ。
「団長様、失礼致します。書類のお届けもので、す……」
そのまま扉を開けたところで、リズは目を丸くして立ち止まった。