平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
室内には、上官級の軍服に身を包んだ二人の男がいた。獣騎士の特徴的なベルトでしっかり締めるタイプのロングジャケットには、装飾が多くある。
一人は顔を知っている副団長のコ―マックだ。とすると、もう一人の方が『団長様』だろう。
獣騎士団長ジェド・グレイソン。確かに女性達の噂通りの美しい男だった。キリリとした端整な顔立ち、夜空のような深い紺色の髪。
こちらを見た彼の目は、息を呑むほどクッキリと際立つ鮮やかな青だ。
目が合った一瞬で、リズは射抜かれたように動けなくなってしまっていた。あまりにも男性として美しいせいで、彼が睨み付けてくる表情と鋭い眼差しが威力二割増しだったせいもある。
団長の執務室にいたには、団長と副団長だった。その二人きりという状況については、仕事の上司と副官、もしくは恋人同士と考えれば普通だ。
だが、そこに広がっていたのは仕事の光景でも、男性同士ラブラブしている様子でもなかった。室内に漂っているピリピリとした空気は、恋人として何かしら擦れ違いや誤解があった、という空気感でもなく――。
それは「あ?」とこちらを睨みつけてくる上司と、土下座姿勢でこちらに助けを求める涙目を向けてきた、下僕のような副団長の光景だった。
おかしい。私が聞いていたのは、温厚で紳士で完璧な上司のはず……。