平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
それがリズの聞いていた『団長ジェド・グレイソン』だった。けれど、何度目の前の光景を確認してみても、それは自分の副官を犬のように扱い叱り付けているドSで容赦のない鬼みたいな上司だ。
リズは混乱が一周回って、ひとまず見なかったことにするのを決めた。睨み付けてくるジェドは魔王のようであるし、とりあえず怖すぎる。
「…………すみません。部屋を間違えました」
そっと目をそらし、そのまま閉めようとした。
直後、ガシリと腕を掴まれてリズは「ひぇッ」と声がもれた。ハッとして目を向けてみれば、先程まで向こうにいたはずの団長ジェドがいた。
すぐそこから見下ろす、ブチ切れ笑顔の美しい青い目と合った。
「なわけねぇだろ。逃がすかよ」
「ひぃい!?」
口からもれたリズのか細い悲鳴は、室内で正座中の副団長、コーマック・ハイランドの「ひぇえ」という細い声と重なって――パタンっと扉の向こうに消えた。