2分で読めるshort story
〇marlboro(SS)
吐き出された紫煙が僕と彼女との間を隔てた。

その臭いが鼻腔を刺すよりも先に眼を刺激したから、何度か瞬きを繰り返して白濁した空クウを睫毛で仰いでみてみたが。

結果。その行為は、目尻に溜まってしまった涙が頬へと溢れ落ちるきっかけ程度にしかならなかった。



それだけの経緯だ。嗚咽が洩れていないのが何よりの証拠。

…少しだけ、噛み締めた唇が痛んでいたけれど 気に留めることは無かった。心の方がずっと、傷ついていたから。



1年前よりも君のキスの拒み方が乱暴になったてしまったことくらいで

「…泣いてるの?」君の声色に少しの恋情さえも感じなくなったことくらいで

「煙が目に染みただけだよ」涙を流してしまうような情けない真似 僕がするワケが無いだろう?君の嫌いなタイプの男じゃあないんだから。


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