きみは俺だけの彼女
side 雪姫
「雪姫!」
放課後、下駄箱で靴を履き替えていると聞き覚えのある声がした。
「空人?もう終わったの?」
声の主を確認することなく靴を履きながら返事した。
「雪姫、ちょっと待ってて!」
私の声を聞いた空人は慌てて靴を履き替えに向かった。
「行こう。雪姫」
空人の事など気にしない奏波が私を促した。
「うん。ごめんね。せっかく送ってくれるって言ってたのに」
「ホント、こんなに早く来るならわざわざ頼まなきゃいいのに」
歩きながら残念そうに文句を吐く奏波。
「ありがとう奏波。今度またあのお店行こうよ」
「本当に?」
声をかけたら速攻で振り返られた。
「うん。思い出したらお腹空いて来ちゃった」
お気に入りのグラタンを思い出すと本当に食べたくなってきた。
「それじゃ今か…」
「雪姫っ」
話の途中で後ろから空人に抱きつかれた。
「あーもぅっ!邪魔しないでよ空人っ!今日は私に頼んだくせに」
「ガセだったんだよ。放課後に委員会があるって聞いたんだ」
「なんだ。相手は1年生?」
「知らね。校章見えなかったし、委員会で来たのか聞いたら違うって言うから帰ってきた」
嘘ついて空人を呼び出したってことは告白だったのかな?
空人は抱きついたまま私の頭に顎を乗せて話す。
奏波はそんな空人の腕を狙った。
「痛っ!」
抓られてすぐに私を解放した空人は奏波を軽く睨む。
「せっかく今から美味しいグラタン食べに行こうと思ったのに邪魔してくれて」
「なんだ。だったら俺も…」
「男子禁制だから」
愚痴りながらも空人を牽制する奏波は背を向けて歩き出そうとした。
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