きみは俺だけの彼女
「まあ、今回は本当にあんたが悪いんだからちゃんと支払ってよね」
お気に入り喫茶店でケーキを2つ頼んだ奏波嬢が空人に念を押す。
「分かってるよ。お嬢が連絡くれたことは感謝してるから連れて来たのに〜」
「連れて来たのは私のほうでしょ?ここは私のお気に入りなの。最初にこの店を教えたのは私よ」
「分かってるってば」
空人と奏波嬢のやりとりを見ていたら
隣に座る雪姫に声をかけられた。
「嶋村くん、あの……」
「ん?何?」
「昨日、帰ってから考えてて…
それで私が知らないだけで、海人は沢山友達がいるんだ、って改めて思って…」
「………」
雪姫から海人の名が出ただけで俺は少し警戒してしまう。
空人が雪姫に抱きついてもすぐ引き剥がせる自信はあるが、海人が同じことをしたら俺は動けないかもしれない。
心の中では殴りたい衝動にかられるだろうが普段の雪姫と海人の距離が解らないから。
「昨日の副部長さんには感謝してるけど、それでも副部長さんだと気付くまでは知らない人だから……」
昨夜雪姫に駆け寄った時に見せたほっとした表情を思い出した。
「海人の友達だと言われても本当かわからないし……。あの、仮に…
多分ないとは思うけど仮にね、海人の友達って人に話しかけられたらどこまで話していいかわからないし、途中で逃げたくても逃げられる自信が無くて……」
「……確かにね。
昨日の副部長はまだ良い奴で良かったが、次も良い奴とは限らないよ」
「うん。それでまた昨日みたいな事あったらまた皆んなに迷惑かけちゃうし…」
「……迷惑とか気にしなくていいよ。
それより雪姫は自分の事だけ考えて。
俺らが行くのが遅かったら間に合わないかも……って考える俺らの為にも、雪姫は自分が目立つ立場にいることを自覚して」
キツい言い方したかもしれない。
でも昨日、駆けつけるまで間に合ってほしいと考えてた焦りや後悔はそう何度も経験したくない。
周りの知らない奴に気を使う前に自分自身の事を考えてほしい。
「うん。ありがとう嶋村くん」
安心しきったいつもの笑顔で礼を言われた。