きみは俺だけの彼女
「思わぬとこでチズが役に立ったわね」
雪姫がトイレに立った時、すぐにお嬢が呟いた。
「役に立った?昨日の副部長のこと?」
「一つはあんた」
空人を指差すお嬢。
「昨日、雪姫を怒らせたんでしょ?そのまま雪姫が帰って悩んでいたら、あんたしばらく雪姫と話してもらえなかったかもね?」
「………そうかもな」
ハンバーガーセットのポテトをつまみながら空人が悔しがる。
「で、もう一つ、さっきの雪姫のお願い事」
空人のバーガーセットの皿からポテトをつまんで俺をポテトで指差すお嬢。
「チズのお陰で、雪姫を知ってる男が沢山いる、って事に本人が気付けたこと。
まぁ、雪姫は知らない男より顔見知りの嶋村を選んだ程度かも知れないけどね」
奏波嬢には俺が雪姫を好きな事などとっくにバレてると思っていたが……。
「…その程度でもいいんだよ」
わざわざ釘を刺すような言葉に苛立ちを覚えた。
俺の彼女役を嫌がる雪姫。
さっきのお願いだって、空人がいない時の話だ。
数カ月に一度あるかないかの時の話。
そういう時にしか、雪姫と二人きりなんて事は起こらないのだから"俺の彼女"説より"空人の彼女"説のが有効だろう。