きみは俺だけの彼女


肩に乗った手が離れたと思ったら腕を掴まれて引っ張られた。



あ、と言う間に嶋村くんの白い道着の合わせ目が見えた。

「ごめん。ちょっとだけこのままでいて」



抱きしめられた腕がすぐ離れてしまいそうで思わず白い道着を掴んだ。

「……雪姫、陸人さんと来たの?」

声を出したらまた止まりそうもなくて、頭を横にふった。

「雪姫一人?」

頷いた。

「嘘ついたって何?」


それを聞かれるとまた涙が溢れるはじめる。



「陸兄に、頼んだのは、私だから」

「何を頼んだの?」

「……嶋村くん」

「ん?」

「嶋村くん、を呼んで、くれた」

「俺?……あ、雪姫が俺をここに呼んだってこと?陸人さんは来ないの?」



頷いた。



「なんだ。そっか」

明らかにほっと胸をなで下ろした嶋村くんは何故か抱きしめた腕に力を込められた。


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