きみは俺だけの彼女
途端に自分の今の状況をはっきり理解した。
「じゃあ雪姫が今泣いてるのは陸人さんとは関係ないのか?」
嶋村くんにしがみついて泣いて抱きしめられてるこの状況は私のせい。
ぎこちなく頷いた。
「……じゃあなんで雪姫は泣いてるの?」
まるで泣いてる子供をあやすかのように抱きしめられたまま頭を撫でられた。
なんで?
私はなんで泣いてる?
陸兄に嶋村くんを頼んだから?
違う。
嶋村くんを見て泣いたんだ。
なんで嶋村くんを見て泣いたの?
……そうだ。
今朝の私の態度だ。
そのせいで嶋村くんに誤解されたと思ったから。
嶋村くんに声をかけられなかったから……。
思い出したらまた止めどなく涙が溢れる。
「……雪姫、寒くない?ここじゃ寒過ぎるだろう?控え室にいた方がいい」
不意に抱きしめられた腕が緩んだ。
言われた言葉に何故か拒絶を感じた。
遠まわしに、この場から去れと言われた気がしたから。
そして自分の格好を下ろし見た。
私服だ。
道着では無い。
こんな格好で射場に座っていたんだ。
そう考えたら当たり前だ。
私は部外者だ。
もう門下生じゃなかった。