きみは俺だけの彼女
動いていた足に力を込めた。
「……やだ。空人はやだ」
立ち止まり、俯きながらも拒否する。
「……雪姫……」
止まっていた涙がまたぶり返す。
「空人じゃ やだ。
嶋村くんじゃないと やだ。
嶋村くんがいいの」
空人を呼んでほしくない。
ただ必死に声を出して訴えた。
そうしたら目の前にまた白い道着が見えたから掴んで握りしめた。
「……空人を呼ばないで。陸兄も海人もやだ。嶋村くんが好きなの。嶋村くんじゃないとやだ」
子供みたいだと自分で思った。
でもどう言ったら伝わるのかわからなくてただ必死に訴えた。
「……うん。雪姫、誰も呼ばない。俺と一緒に帰ろう」
耳元ではっきりと言われて嬉しかった。
ぐっと強く抱きしめられて嶋村くんの体温を感じたら温かくなって気持ちが緩んだ。
「嶋村くんが好き。本当はずっと一緒にここに来たかったの。ここで嶋村くんを好きになったの」
思っていたことが次々と言葉になった。
でも
もう言うな、というように頭を胸に押しつけられて押し黙った。
「俺もここで雪姫を好きになったんだ。
……好きだよ雪姫。また一緒に帰ろう」
「うん」