きみは俺だけの彼女
初冬の冷たい空気の中、眠気を覚ますかのように無言で走り出した。
身体が温まってきた頃に空人が話し出した。
「正直、こんな風になるとは思ってなかったんだよね」
俺のことか、雪姫のことか……。
「今まで上手くやってたつもりなんだけどなぁ」
……自分のことか。
「正騎、いつから気付いてた?」
「……何の話だ?」
あえて知らないフリをする。
「……言うと思ったよ」
鼻で笑うような返しに俺もふっと笑う。
「雪姫は産まれた時からお姫様なんだよ」
……いきなり何の話だ?
自然と空人の話に耳を傾ける。
「雪姫の名前。雪姫の母親とうちの母親が"姫"を絶対に付けるって言ったらしいよ。……俺が女で産まれてたら俺にも付いたかもな」
思わず吹き出した。
「お前、夏産まれだろ?人魚姫とか?」
「俺も考えたけど夏の姫ってそれくらいしか思いつかないよな。それかまんま夏姫とか空姫と書いてキラキラネーム……」
朝っぱらから二人で笑った。