きみは俺だけの彼女




紅葉の落ちた木々の間から冷たい風が吹く。


さっきまで顔を赤くして楽しそうに笑っていた雪姫が急に大人しくなった。



寒いのかと思って声をかけた。

乗馬が好きかも、と言う雪姫。


好きという割には楽しそうに見えない。
妙な不安に駆られた。



今、目の前にいる雪姫が別の空間にいるような錯覚を起こす。

そのまま馬を降りて林の奥に消えてしまいそうな感覚。



そう口に出して言っても雪姫は何も言わない。


だから少しからかうように、「一緒に乗る口実がなくなる」と言っても言葉は返ってこなかった。




一緒に馬に乗っているのに、雪姫は一人に見えた。




広いリビングで一人小さくなっていた姿が過る。



雪姫と仲良くなって近付いたと思ったのに、近くなるほど遠く感じる。

広い空間の中で小さくなっている雪姫には俺の声も届かないのか……。



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