きみは俺だけの彼女
どうやら雪姫は陸人さんに頼んで俺を道場に呼んだらしい。
なんでわざわざ陸人さんに頼んだのかはわからないが、陸人さんが来ないと聞いて少しホッとした。
それなら何故、雪姫が泣いてるんだ?
思わず抱き寄せた腕に力を入れる。
「…じゃあなんで雪姫は泣いてるの?」
声をかけながら頭を撫でる。
少しでも落ち着いてくれればと思って。
でも、雪姫は何も言わない。
さすがにこのままでは雪姫が風邪をひくと思って声をかけて雪姫を控え室に促そうとした。
ふらっと立ち上がった雪姫は虚ろな目をしていた。
「ごめんなさい。……もう帰る」
突然そう言って一人で帰ろうとした。
だから声をかけて腕を掴んだ。
でもすぐに振り払われて拒絶された。
一瞬、俺は振られたのかと錯覚する程の拒絶。
でも自分のことはどうでもいい。
今の雪姫を放っておけなかった。
もう一度強く腕を掴む。
「今だけでいいから、俺の言う事聞いて。一人で帰るな。今すぐ帰りたいなら空人を呼ぶからそれまでは大人しくここにいて」
ついキツく言ってしまった。
でも、一人で帰らせたくなかった。
俺がダメなら空人でもいい。
雪姫を一人にさせたくなかった。