きみは俺だけの彼女


しばしの沈黙。




「雪姫、今朝、佐藤に言ってたね。海人と話すって」

「……うん」

「………俺も一緒に行っていい?」

「………わ、私、嶋村くんと付き合うってちゃんと海人に言いたいの」


俺は無意識にピクッと反応した。


「だから……嶋村くんがいると……自分で言えない気がして……」



多分、今の雪姫には何を言っても折れない。

そんな気がした。

でもどうしても一つだけ言っておきたかった。



「雪姫は女の子で海人は男だ。佐藤も言ってたよね、最近の海人はヤバいって。海人が雪姫を本気で好きだとしたら?海人に襲われても逃げられる自信ある?」

「……海人はそんなことしないよ」




雪姫ならそう言うと思ってた。

その優しさに浸け込む海人を知らないから。



これ以上は不毛な言い合いになりそうだ。

どんなに俺が心配してると言っても大丈夫と言って引かないだろう。



俺は雪姫の腰にまわした手を離した。



「わかった。もう遅くなるから帰ろう」

「………うん」


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