きみは俺だけの彼女
「良いな〜。雪姫の好きなグラタン食べてみたいなぁ〜」
「グラタンなんてそんなに味変わらなくね?」
「佐藤はコンビニと喫茶店のグラタンが同じなんだね」
冷やかすように言ったら変に飛び火した。
「俺は嶋村ほど味オンチじゃねぇよ」
「なんで俺が味オンチなんだよ」
二人が話し出した時。
「…え?…あれ?……嶋村、先輩?」
嶋村くんを指差して空人が吃驚したような顔をしてた。
空人の言葉に、私と佐藤と嶋村くんが立ち止まる。
「……何?ってか、"先輩"いらないけど」
嶋村くんが聞き返す。
「え?空人、嶋村と何かあんの?」
佐藤も気になって空人に聞く。
確かに空人と嶋村くんは接点が無さそうだし気になる。
「あ、違う。今気付いたから。先輩の名前が"嶋村"ってことに」
慌てて空人が釈明した。
「……?」
どういうことだ?
「だから〜、佐藤と雪姫のクラスメイトなのは知ってたけど、顔だけで名前まで知らなかったんだよ〜」
「あ〜なるほど〜。って、今、何月だよお前」
「9月だよ!佐藤が嶋村先輩のこと名前で呼ばないからだろっ!」
「俺のせいか?お前が嶋村に聞けばいいだろ?」
何故かムキになる空人と佐藤。
「いや、俺と空人は全然話さないからな。知らなくてもしょうが無いだろ」
なんだ、そんなことかと言うように、嶋村くんが呆れてる。
確かに空人が入学して私と二人で帰るようになってからは、今日みたいに4人で帰ったのは数回しかない。
一緒にいても嶋村くんが静かに会話を聞いてた感じだったな。
でも、佐藤と空人と嶋村くんが言い合うこの光景が見ていて楽しかった。