きみは俺だけの彼女



「良いな〜。雪姫の好きなグラタン食べてみたいなぁ〜」

「グラタンなんてそんなに味変わらなくね?」

「佐藤はコンビニと喫茶店のグラタンが同じなんだね」

冷やかすように言ったら変に飛び火した。




「俺は嶋村ほど味オンチじゃねぇよ」

「なんで俺が味オンチなんだよ」




二人が話し出した時。



「…え?…あれ?……嶋村、先輩?」


嶋村くんを指差して空人が吃驚したような顔をしてた。



空人の言葉に、私と佐藤と嶋村くんが立ち止まる。

「……何?ってか、"先輩"いらないけど」

嶋村くんが聞き返す。



「え?空人、嶋村と何かあんの?」

佐藤も気になって空人に聞く。
確かに空人と嶋村くんは接点が無さそうだし気になる。



「あ、違う。今気付いたから。先輩の名前が"嶋村"ってことに」

慌てて空人が釈明した。

「……?」
どういうことだ?



「だから〜、佐藤と雪姫のクラスメイトなのは知ってたけど、顔だけで名前まで知らなかったんだよ〜」


「あ〜なるほど〜。って、今、何月だよお前」

「9月だよ!佐藤が嶋村先輩のこと名前で呼ばないからだろっ!」


「俺のせいか?お前が嶋村に聞けばいいだろ?」

何故かムキになる空人と佐藤。



「いや、俺と空人は全然話さないからな。知らなくてもしょうが無いだろ」

なんだ、そんなことかと言うように、嶋村くんが呆れてる。



確かに空人が入学して私と二人で帰るようになってからは、今日みたいに4人で帰ったのは数回しかない。

一緒にいても嶋村くんが静かに会話を聞いてた感じだったな。



でも、佐藤と空人と嶋村くんが言い合うこの光景が見ていて楽しかった。


< 6 / 263 >

この作品をシェア

pagetop