好色歯科医が初めて真剣な恋をしました

「真美は どんな子供だったの?」

海は 子供の頃以来と 真美が言ったから。

駿平は 車を走らせながら 真美に聞く。


「すごくいい子。」

真美は ポツリと答えたけれど

駿平は 言葉の奥に 苦さを感じた。


もしかして真美は 幸せな子供じゃなかったの?


「真美は 今でも いい子だもんな。」

駿平が チラッと 真美を見ると

真美も 駿平に 笑顔を向ける。


「いつもいい子。いつも 真美ちゃんは いい子だねって言われて。ねぇ 先生。私 本当に いい子なの?」

「真美は いい子の自分が イヤなの?」

「ううん。そうじゃないけど。私 誰のために いい子にしているのかなって。」

「自分のためでしょう?」

「違う。多分…親のため。」

「真美は ご両親に いい子じゃないと 叱られたの?」

「ううん。私 いい子じゃないこと なかったから。叱られたこともないの。」

「じゃ 真美は どうしていつも いい子だったの?」

「わかんないの。母のせいかな…私の母 すごく良い母親だから。」


駿平は 真美と話しながら 

子供の頃の自分を 思い出していた。


自分が いい子でいれば お父さんとお母さんも 仲良くなる。


父と母の間に漂う 不穏な空気が 苦しくて。

駿平は 小さな心を 痛めていた。




< 25 / 74 >

この作品をシェア

pagetop