こちら、陰陽相談所~"妖怪"は目に見えなくてもちゃんと存在するのです☆~
(でも,なんであたしなの?)
 ふと()いた疑問をぶつけてみようかとも思ったけれど,ムダだと思ってやめた。
 リストラとは,()てして理不尽(りふじん)なものなのである。
「――まあ,あと二週間くらいあるし。その間はキチンと働いてもらって,次の就職先はゆっくり探せばいいよ」
 他人事(ひとごと)みたいに言う店長に,美咲は内心カチンときた。
("ゆっくり"? 冗談(じょうだん)じゃないよ! こっちは生活かかってるのに!)
 美咲は高校を卒業してから,池袋(いけぶくろ)の賃貸アパート(間取りは(ワン)DK)で一人暮らしをしている。
 実家からの仕送りはほとんどなく,この店でのアルバイトの収入だけで生活していた。そのために自分の体力の限界ギリギリまでシフトを詰め,この一年やってきたのだ。
 その収入が,今月で終わってしまう。来月一〇日に給料が振り込まれたら,それで最後。次の仕事だって,見つかってもすぐに収入があるわけではない。
(もう,"あと二週間"なんて悠長(ゆうちょう)なこと言ってられない! 一刻(いっこく)も早く,次の手を打たないと!)
 アルバイト従業員をリストラするのに,次の就業先も世話してくれないような薄情(はくじょう)な会社だ。こんなところ,さっさと辞めてしまうに限る!
「店長,もう仕事に戻っていいですか?」
「ああ,そうだね。――仕事中に呼び出して悪かったね,堀田さん」
 美咲は「いえ」と取り(つくろ)った笑顔で(こた)えて仕事に戻ったけれど,内心では「早く次の仕事を見つけてこんな会社(トコ)とはおサラバしてやる!」と固く決意していた――。

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 ――翌日(よくじつ)。この日は美咲のバイトは休み。
 前日の固い決心が()るがないうちに,彼女は職探しをすべく,朝から部屋でノートPCと向き合っていた。
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