こちら、陰陽相談所~"妖怪"は目に見えなくてもちゃんと存在するのです☆~
一、鬼火に導かれて……
 ――そのわずか数分後。
 
 ♪ ♪ ♪ ……

 机の上に置いていた,美咲のスマホが着信音を(かな)でた。電話の着信音だ。
「……えっ? 電話?」
 PCにメールで返事が来るものと思っていた美咲は,思わず発信者の番号を確かめる。番号は,PCの画面に表示されている〈嵯峨野よろず相談所〉の番号そのものだ。
(……おっと! 早く出なきゃ,先方に失礼だよね)
 美咲はひとつ深呼吸をすると,スマホ画面の通話ボタンをタップして耳に当てた。
「お待たせしました。堀田です」
『堀田美咲さんの携帯(けいたい)でしょうか? 先ほどメールを頂いた,〈嵯峨野よろず相談所〉の嵯峨野大我と申しますが』
 聞こえてきたのは,いわゆる"イケボ"――世の女性たちを(とりこ)にしそうな,落ち着いた男性の声。
 けれど,まだ年齢(ねんれい)はそれほどいっていないのではないだろうか。せいぜい三〇歳かそのあたりだと推測(すいそく)される。
「はい! あたしが堀田美咲です。総合求人サイトでそちらの募集記事を見つけて,応募させて頂きました。――というか,募集記事について,お()きしたいこともあったので……」
 そもそも,"よろず相談所"とは一体何なのか? どんな仕事をすればいいのか? 武道の有段者であることが,仕事と何の関係があるのか? ――など,美咲には訊きたいことが山のようにあるのだ。
『そうですか。では面接に来られた時に,直接(ぼく)からお話ししましょう。――それで堀田さん,面接はいつがよろしいですか? ご都合の悪い日時などはありますか?』
 訊ねられた美咲は,「えーっと……」と悩む間もなく即答した。
「今日中にお願いします。夕方でも構わないので」
 まだ正式にカフェを解雇されたわけではないので,明日からはまたシフト通りに出勤しなければならない。
 が,今日中に即日採用されれば,明日にでも依願(いがん)退職の(むね)を会社に伝え,めでたくあのいまいましいカフェチェーンとおサラバできる。
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