こちら、陰陽相談所~"妖怪"は目に見えなくてもちゃんと存在するのです☆~
 求人情報の画面右上にある「印刷(いんさつ)」のボタンをクリックすると,Wi―Fi(ワイファイ)で接続されたレーザープリンターからビーッ……と一枚のプリント用紙が()き出された。
 ――実は,美咲にはもう一つ,()められた特殊(とくしゅ)能力(ちから)があった。
 印刷されたばかりのプリント用紙に手を伸ばすと,美咲はふと(まゆ)をひそめる。
「……あれ? この求人,なんか不思議な感じがする。気のせいかな?」
 彼女は(もの)(ごころ)ついた頃から,妖怪を()ることができたり,不思議な力を感じたりすることが時々ある。それは邪気(じゃき)だけではなく,(れい)(りょく)のようなものだったりもする。
 今感じたのは,どちらかといえば(きよ)い力の方だったように思う。
「もしかしてここって,普通の相談所じゃないとか……?」
 まさかなあ,と思いつつ,美咲はまたPCに向かった。
 この〈嵯峨野よろず相談所〉について興味(きょうみ)が湧いてきて,(ため)しに検索(けんさく)エンジンにかけてみる。
 ウェブサイトでもあれば,検索に引っかかるはずである。
「まあ、応募先の企業ののことを知るのも,就活の一環(いっかん)だしねえ。――お? ビンゴ♪」
 何件かの情報がヒットしたらしく,〈嵯峨野よろず相談所〉のホームページからSNSの評判までがズラリと出てきた。
 美咲はまず,ホームページへは行かずにSNSや(くち)コミの情報をチェックしてみた。

『代表の嵯峨野さん,想像以上にイケメンでマジ感動♡』
『あのイケメン(うらな)い師ナニ? めっちゃ(カミ)なんだけどー!!!』
『ルックスはもちろん,アドバイスも分かりやすくて的確。相談しに行ってよかった☆』

 ……なるほど,評判は良好(りょうこう)ながら謎のワードが飛び()う書き込みのオンパレード。
(えっ,イケメン? 占い師? ここって一体どんな相談所なの??)
 美咲の頭の中には,"(はてな)"マークが飛び交う。ますます謎は深まるばかりだ。
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