俺は、電脳世界が好きなだけの一般人です
第五話 報告と顛末
「原先生。これを見てください」
「あぁ村上くんが言っていましたよ」
「え?彼は、なんて言っていたのですか?」
「”製図や文章作成に便利なツールを沢山集めてあります”だと思いますよ」
「そうですか・・・先生、確かに、これは便利な物が多いです。しかし、ほとんどすべてが、市販の物です」
「えぇそうですね。彼は、自由に使える物だと言っていましたよ?」
あっダメな人だ。
ヘルプを呼ぼう。呼び出しは、寝ぼけている美優先輩の動画いいかな?
《間違えて、梓先輩のスマホのメッセージに送ってしまった!!困った。そうだ。梓先輩に、”美優先輩のアドレスと間違えて、美優先輩の寝ぼけている動画を送ってしまいました。ごめんなさい”と送ればいいかな?あれ、梓先輩に送るはずが、間違えて、美優先輩のアドレスに送ってしまった》
ドアが開けられる。
「キミ!なんでこんな素敵な物を持っているのだ?もっとあるだろう?出し給え!」
「タクミくん。なんで?あれなんで?え?え?ダメだからね」
きっちり2分。
「あぁすみません。アドレスを間違えてしまったのですね。あれは、前に先輩たちが俺の家でウトウトしている所を撮影した物で、俺が持っているのも問題だと思ったので、美優先輩に返そうかと思ったのですよ。それで、アドレスを間違えてしまったのですね。怖いですね」
「ふぅむそう言われれば、これ、この前の美優の格好だな。キミ。ありがとう。貴重な物だな。僕の宝物にするよ。お礼は期待してくれ!」
「いえいえ。俺が間違えて送ってしまったので、できましたら、美優先輩にかえして、それは削除してください。お願いします。美優先輩。申し訳ない。そういう事ですから、交渉は梓先輩にしてください。お二人。ちょうどよかった話に加わってください」
「まぁそうだな」
「タクミくん。それなら、電話してくれればいいのに・・・」
少しだけ涙目になっている美優先輩と、ウキウキしている梓先輩を横に置いて、話を再会する。
「先程、先生には話しましたが、建築科のサーバだと言われている。パソコンの外付けHDDには、市販ソフトやマジコンで使うROMが大量に置かれていました」
「キミ!それは本当かい?」
「はい。残念ながら」
「でも、タクミくん。市販ソフトの場合、ライセンスキーなんかが必要になってくるわよね?」
「えぇ丁寧に隠しファイルで・・・ほら、市販ソフトと同じ名前のテキストファイルが見えますよね。この中身は・・・ほら、ライセンスになっています」
「え?でも、でも、最近の物は、ネットワーク認証とかで、ライセンス数がカウントされているわよね?」
「そうですね。そのために、当時って言っても、一年前ですが、その時に、最新の物ではなく、古い、その手の認証ではないものばかりだと思いますよ。全部のソフトを知っているわけではありませんから、違うかも知れませんけどね」
先輩方二人は、問題の根深さがわかってくれたようだ。よかった、学校全体が腐ってるわけではなさそうだ、一部の生徒が腐っているだけで、それ以外の生徒は常識を持ってくれている。
問題は、教師の方だな。原先生は、まだ若い先生だから、パソコン・・・サーバの管理を押し付けられた可能性がある。それで、途方に暮れていた。そんな感じだろう。知識が無いだけならいい。教えれば覚えてくれる。一番まずいのは、知識があるのに、まぁ大丈夫だろうという認識で動いている場合だ。原先生の場合には、先程の対応から、単純に”知識有ると思っている”人物からの説明で納得していた感じだろう。
「原先生。正直にいいます。これ、訴えられたら、安く見て1千数百万。下手したら、数千万クラスの賠償請求が来てもおかしくありません」
「え?だって?大丈夫なのでしょう?」
「そうですね。ソフトの方は、学校で使っているからって値引き交渉が可能かも知れません」
「で、ですよね?」
「えぇアカデミックパックとかもありますから、ライセンスが確認されて、しっかり管理していけば、大丈夫でしょう。そうだ、梓先輩。聞き忘れていましたが、上地は、部活連の会長でしたよね?その後の会長は」
「キミの予想通りだよ」
「ちなみに今の・・・は、ユウキに聞けばわかりますかね?」
ユウキに電話する。
『ユウキ。今の部活連の会長は、建築科の男子か?』
『なにいきなり・・・ちょっとまって』
なにやらゴソゴソしている。
『うん。選挙で、デザイン科の・・・安倍くんになっているよ?なにかあったの?』
『あぁ帰ったら教える。今は、忘れてくれ』
『わかった!まだかかりそう?』
『そうだな。あと1時間くらい見てくれたらいいかな』
『了解。食堂に行くかもしれないからよろしくね』
『わかった。俺の財布そっちにおいてあるからな』
『ゴチになります!』
先輩たちがなにやら生暖かい目で見ている。
「原先生。安倍って生徒を知っていますよね?」
「もちろんです。今、生徒の対応を彼がしています」
「生徒の対応?」
「え?あっ建築とデザインだけなのですか?パソコンの使い方を教えたり、サーバの使い方とかを教えているのが彼です」
「・・・・もしかしなくても、村上からの推薦ですか?」
「申し訳ない。そこはわからないですが、村上くんと同じ部活だったと思います。確か、ハンドボール部だったと思います」
「先輩!」
「あぁそうだ」
ハンドボール部に踏み込むか?
生徒総会の権限を使えばできるかも知れない。パケットの監視を強めるか?
「すみません。話を戻します。この、アイコンが何も出ていないファイルが沢山ありますよね?」
「えぇありますね」
原先生にも確認してもらった。
「俺も、手元にマジコンは持っていないので、確実では無いのですが」
「キミ。そのマジコンとは何だね?」
「簡単に言えば、ゲームソフトのコピーを作ったり、コピーからゲーム起動ができるようにする物です」
「違法なのか?」
「個人的には、違法ではないと思います」
「そうなのか?」
「はい。極論ですが、DVDやBDの違法コピーが大量にあるからと言って、DVDプレイヤーやBDプレイヤーは違法では無いですよね?」
「なんとなく騙されているような気がするが・・・」
「えぇ嘘でも本当でもない事です。しかし、市販のDVDソフトやBDソフトを、認められた権限でコピーしたりするのはOKでも、それを超えてネットにアップしたり、他人に与えたりしたらダメですよね」
「当然だな。だから、僕も買ったソフトは、美優と二人っきりで楽しむ事にしている」
「梓先輩の趣味嗜好は置いておくとして、これらのソフトは、違法にダウンロードされてきた可能性が高い物です」
「え?そうなのか?」「し、篠崎くん。それは本当ですか?」
「えぇ残念ながら、そうですね。建築とデザインの男子生徒が何人居るのか・・・ざっと200名くらいですか?ハンドボール部が発生源だとして、部活関係者を入れても、300名程ですか?」
クラスで30名。建築とデザインはそれでも女子が多い。男子は、1学年40名で、3学年で120名。多く見て、200名。部活連はもっと少ないだろう。でも、多く見て300名。
「そうだな。200と考えれば十分だと思うぞ」
「そうなのですね。それでは、200名とします。ここに入っている数は、2,891ファイル。計算しやすいように、2,800としましょう。一人あたり、14本となります。概算ですが、一人あたり、約8万程度のソフトを買った事になります。それも、かなりのマイナーなソフトもあります。普通に考えてありえないでしょう」
俺のSurfaceから、HDDのに接続して、いくつかのファイルのプロパティを見ていく。
あぁやっぱりあったね。
「このファイルは、ウィルスが混入されています。これは、ロシア語だと思いますが、美優先輩?」
「そうね。ロシア語だね。他にも、ハングルも有るみたいだね」
「建築科は、ロシア語やハングルが堪能な生徒が多いのですね」
「キミ。嫌味は言わないで欲しい」
「すみません。でも、これが現実です。これは、海外の違法サイトにアップロードされた、日本のゲーム会社が精魂込めて作ったゲームをコピーして、て、敬意も何も抱かないで己の欲望のみに邁進した結果です。俺も、もっとログの監視を強めればよかったです。外部からの接続はできなかったと思いますが、一応調べてみます」
情報流出だと思っていたら、もっと大きな大蛇が潜んでいた。
まだセキュリティが甘くて、情報流出していただけの方が良かった。
報告書を上げる事になったが、無償での作業が、また心を重くした。多分、これ会社規模でやっていたら、会社が吹っ飛ぶレベルの問題だ。学校だからと甘く見る事はできないだろう。
建築科の男子全員の首が飛ぶレベルの問題だ。それだけではなく、部活連が絡んでいたりしたら・・・活動停止になる部活が10やそこら出ても不思議ではない。
先輩たちもその可能性を考えている。
厳密の意味で、建築科と建築デザイン科は違う科だが、先生のほとんどが同じだし授業内容も同じ物が多い。その科が消滅してしまう可能性さえある。学校側の判断に任せる事にするか?
本来なら、ACCSに訴えるのが正しい対応だろう。
学校の良心に期待しよう。
--- 後日
学校は、ACCSに自ら訴えでた。
多額の賠償請求に関しては、免れたようだ。建築科の教師数名と、部活連の管理教師、ハンドボール部の監督及びコーチの首が飛ばされ、校長と副校長と、全日制の事務局長と事務局長次席が、役職応じた給与カットがなされた。
生徒としては、安倍は自主退学。その他の生徒に関しても、長い者で30日の休学処分。ハンドボール部は、やはり部室に大量のあってはならない物が存在していた。パソコンの中からは、無修正の動画。盗撮用のカメラまで有った。それらの購入資金は、上地が部活連の予算や生徒会の判子を偽造して作成した請求書から出ていた。
村上も、同じ事をしていた。学校は、二人を呼び出して、問いただした。認めなかったので、訴える事になってしまった。
そして俺は・・・
「校長!なんで俺が、部活をやっていない俺が、部活連の会長を兼ねないとならないのですか?だったら、部活連を潰して、生徒会に吸収させればいいと思うのですが?」
「篠崎くん。できない事を言わないで欲しい。生徒が作った規約は読みましたよね?」
「えぇ抜け道がないか、必死に探しましたが、残念ながらなかったです。唯一抜け道だったのが、生徒総会への吸収だけでしたよ。本当に残念な事にね」
「わかってくれて嬉しいよ。学校としては、どちらでもかまいませんよ?ただ、今後の事を考えると、吸収しないほうがいいでしょうね」
「嬉しいお言葉です。私もそう思います!よ!えぇ本当にね!」
「そうでしょう。キミが兼ねるのが落とし所としては一番なんですよ。私としては、鵜木先生の教え子の子供にこんな事を頼むのは残念ですけどね。キミがやらないと、桜君の娘さんがやることになるのですよ。次点は彼女でしたからね」
「はい。はい。鵜木さんの名前を出されたら、オヤジや桜さんに何言われるかわかりませんからね。やりますよ。やりゃぁいいのでしょ!」
「そうです。最初からそう言ってもらえればよかったのですよ。おかげで、克己くんや桜くんや、美和ちゃんに連絡しなくて済みましたからね」
ソファーに座りなおした
「校長先生。1つお願いと、1つお聞きしたい事が有るのですがいいですか?」
「えぇいいですよ。私にできる事なら、叶えますよ」
「ありがとうございます。まずはお願いですが、学校の中に、コンプライアンスを学べる場所を作ってください。外部から講師を招いて、月に数回教員全員と事務員全員と希望する生徒に受けさせてください。”科を作れ”は、無理だと思います。部活という感じでもないので、講習会とかになるとは思いますが、できますか?」
校長は少し考えてから
「いいでしょう。講師は、克己くんか、美和ちゃんに頼めば出てきますよね?」
「はい。大丈夫だと思います」
「それで聞きたい事とは?」
「簡単な事です。オヤジと桜さん・・・それに、美和さん。あと、真一さん。あと、安城幸宏さんと、井原聡子さん」
なにか知っているのだろう。
「あと、朝日由紀さんは、どういった方たちで、オヤジたちはどうして、ここまで結束が固くて、それでいて、その業界である程度の認知度が有るのですか?」
校長は、かけていたメガネを外した。
「篠崎くん。それは、私の口から言えません。私が・・・僕が、しっかり、彼らを、いや、彼女たちを見ていたら、違った結果になったかも知れない。僕たちは、そらしては行けない事から、目をそらしてしまった。だから決めた、森下桜が、僕の所に来て、”警官”になったと言った時に、僕たち大人が目をそむけた事を見続ける事に・・・申し訳ない。僕の口からは、これ以上は言えない」
「長嶋校長。校長も、関係者なのですね?」
「そうです。ただ、僕は運が良かっただけです。桜くんに、克己くんに、救われたのです」
「わかりました。ありがとうございます。オヤジたちも、2年後に話してくれると約束してくれています。それまで待とうと思います」
「そうか・・・あと二年だったな。克己くんと桜くんに、その時には、僕も行きたいが問題ないか聞いておいてくれないか?」
「わかりました。それでは、校長。よろしく願いします」
「あぁわかった。キミにも苦労をかけるが、今切れるカードでキミが最大戦力なのだ。済まないが踏ん張ってくれ」
「えぇわかりました。俺は、俺のできる範囲でやってみます」
「あぁ村上くんが言っていましたよ」
「え?彼は、なんて言っていたのですか?」
「”製図や文章作成に便利なツールを沢山集めてあります”だと思いますよ」
「そうですか・・・先生、確かに、これは便利な物が多いです。しかし、ほとんどすべてが、市販の物です」
「えぇそうですね。彼は、自由に使える物だと言っていましたよ?」
あっダメな人だ。
ヘルプを呼ぼう。呼び出しは、寝ぼけている美優先輩の動画いいかな?
《間違えて、梓先輩のスマホのメッセージに送ってしまった!!困った。そうだ。梓先輩に、”美優先輩のアドレスと間違えて、美優先輩の寝ぼけている動画を送ってしまいました。ごめんなさい”と送ればいいかな?あれ、梓先輩に送るはずが、間違えて、美優先輩のアドレスに送ってしまった》
ドアが開けられる。
「キミ!なんでこんな素敵な物を持っているのだ?もっとあるだろう?出し給え!」
「タクミくん。なんで?あれなんで?え?え?ダメだからね」
きっちり2分。
「あぁすみません。アドレスを間違えてしまったのですね。あれは、前に先輩たちが俺の家でウトウトしている所を撮影した物で、俺が持っているのも問題だと思ったので、美優先輩に返そうかと思ったのですよ。それで、アドレスを間違えてしまったのですね。怖いですね」
「ふぅむそう言われれば、これ、この前の美優の格好だな。キミ。ありがとう。貴重な物だな。僕の宝物にするよ。お礼は期待してくれ!」
「いえいえ。俺が間違えて送ってしまったので、できましたら、美優先輩にかえして、それは削除してください。お願いします。美優先輩。申し訳ない。そういう事ですから、交渉は梓先輩にしてください。お二人。ちょうどよかった話に加わってください」
「まぁそうだな」
「タクミくん。それなら、電話してくれればいいのに・・・」
少しだけ涙目になっている美優先輩と、ウキウキしている梓先輩を横に置いて、話を再会する。
「先程、先生には話しましたが、建築科のサーバだと言われている。パソコンの外付けHDDには、市販ソフトやマジコンで使うROMが大量に置かれていました」
「キミ!それは本当かい?」
「はい。残念ながら」
「でも、タクミくん。市販ソフトの場合、ライセンスキーなんかが必要になってくるわよね?」
「えぇ丁寧に隠しファイルで・・・ほら、市販ソフトと同じ名前のテキストファイルが見えますよね。この中身は・・・ほら、ライセンスになっています」
「え?でも、でも、最近の物は、ネットワーク認証とかで、ライセンス数がカウントされているわよね?」
「そうですね。そのために、当時って言っても、一年前ですが、その時に、最新の物ではなく、古い、その手の認証ではないものばかりだと思いますよ。全部のソフトを知っているわけではありませんから、違うかも知れませんけどね」
先輩方二人は、問題の根深さがわかってくれたようだ。よかった、学校全体が腐ってるわけではなさそうだ、一部の生徒が腐っているだけで、それ以外の生徒は常識を持ってくれている。
問題は、教師の方だな。原先生は、まだ若い先生だから、パソコン・・・サーバの管理を押し付けられた可能性がある。それで、途方に暮れていた。そんな感じだろう。知識が無いだけならいい。教えれば覚えてくれる。一番まずいのは、知識があるのに、まぁ大丈夫だろうという認識で動いている場合だ。原先生の場合には、先程の対応から、単純に”知識有ると思っている”人物からの説明で納得していた感じだろう。
「原先生。正直にいいます。これ、訴えられたら、安く見て1千数百万。下手したら、数千万クラスの賠償請求が来てもおかしくありません」
「え?だって?大丈夫なのでしょう?」
「そうですね。ソフトの方は、学校で使っているからって値引き交渉が可能かも知れません」
「で、ですよね?」
「えぇアカデミックパックとかもありますから、ライセンスが確認されて、しっかり管理していけば、大丈夫でしょう。そうだ、梓先輩。聞き忘れていましたが、上地は、部活連の会長でしたよね?その後の会長は」
「キミの予想通りだよ」
「ちなみに今の・・・は、ユウキに聞けばわかりますかね?」
ユウキに電話する。
『ユウキ。今の部活連の会長は、建築科の男子か?』
『なにいきなり・・・ちょっとまって』
なにやらゴソゴソしている。
『うん。選挙で、デザイン科の・・・安倍くんになっているよ?なにかあったの?』
『あぁ帰ったら教える。今は、忘れてくれ』
『わかった!まだかかりそう?』
『そうだな。あと1時間くらい見てくれたらいいかな』
『了解。食堂に行くかもしれないからよろしくね』
『わかった。俺の財布そっちにおいてあるからな』
『ゴチになります!』
先輩たちがなにやら生暖かい目で見ている。
「原先生。安倍って生徒を知っていますよね?」
「もちろんです。今、生徒の対応を彼がしています」
「生徒の対応?」
「え?あっ建築とデザインだけなのですか?パソコンの使い方を教えたり、サーバの使い方とかを教えているのが彼です」
「・・・・もしかしなくても、村上からの推薦ですか?」
「申し訳ない。そこはわからないですが、村上くんと同じ部活だったと思います。確か、ハンドボール部だったと思います」
「先輩!」
「あぁそうだ」
ハンドボール部に踏み込むか?
生徒総会の権限を使えばできるかも知れない。パケットの監視を強めるか?
「すみません。話を戻します。この、アイコンが何も出ていないファイルが沢山ありますよね?」
「えぇありますね」
原先生にも確認してもらった。
「俺も、手元にマジコンは持っていないので、確実では無いのですが」
「キミ。そのマジコンとは何だね?」
「簡単に言えば、ゲームソフトのコピーを作ったり、コピーからゲーム起動ができるようにする物です」
「違法なのか?」
「個人的には、違法ではないと思います」
「そうなのか?」
「はい。極論ですが、DVDやBDの違法コピーが大量にあるからと言って、DVDプレイヤーやBDプレイヤーは違法では無いですよね?」
「なんとなく騙されているような気がするが・・・」
「えぇ嘘でも本当でもない事です。しかし、市販のDVDソフトやBDソフトを、認められた権限でコピーしたりするのはOKでも、それを超えてネットにアップしたり、他人に与えたりしたらダメですよね」
「当然だな。だから、僕も買ったソフトは、美優と二人っきりで楽しむ事にしている」
「梓先輩の趣味嗜好は置いておくとして、これらのソフトは、違法にダウンロードされてきた可能性が高い物です」
「え?そうなのか?」「し、篠崎くん。それは本当ですか?」
「えぇ残念ながら、そうですね。建築とデザインの男子生徒が何人居るのか・・・ざっと200名くらいですか?ハンドボール部が発生源だとして、部活関係者を入れても、300名程ですか?」
クラスで30名。建築とデザインはそれでも女子が多い。男子は、1学年40名で、3学年で120名。多く見て、200名。部活連はもっと少ないだろう。でも、多く見て300名。
「そうだな。200と考えれば十分だと思うぞ」
「そうなのですね。それでは、200名とします。ここに入っている数は、2,891ファイル。計算しやすいように、2,800としましょう。一人あたり、14本となります。概算ですが、一人あたり、約8万程度のソフトを買った事になります。それも、かなりのマイナーなソフトもあります。普通に考えてありえないでしょう」
俺のSurfaceから、HDDのに接続して、いくつかのファイルのプロパティを見ていく。
あぁやっぱりあったね。
「このファイルは、ウィルスが混入されています。これは、ロシア語だと思いますが、美優先輩?」
「そうね。ロシア語だね。他にも、ハングルも有るみたいだね」
「建築科は、ロシア語やハングルが堪能な生徒が多いのですね」
「キミ。嫌味は言わないで欲しい」
「すみません。でも、これが現実です。これは、海外の違法サイトにアップロードされた、日本のゲーム会社が精魂込めて作ったゲームをコピーして、て、敬意も何も抱かないで己の欲望のみに邁進した結果です。俺も、もっとログの監視を強めればよかったです。外部からの接続はできなかったと思いますが、一応調べてみます」
情報流出だと思っていたら、もっと大きな大蛇が潜んでいた。
まだセキュリティが甘くて、情報流出していただけの方が良かった。
報告書を上げる事になったが、無償での作業が、また心を重くした。多分、これ会社規模でやっていたら、会社が吹っ飛ぶレベルの問題だ。学校だからと甘く見る事はできないだろう。
建築科の男子全員の首が飛ぶレベルの問題だ。それだけではなく、部活連が絡んでいたりしたら・・・活動停止になる部活が10やそこら出ても不思議ではない。
先輩たちもその可能性を考えている。
厳密の意味で、建築科と建築デザイン科は違う科だが、先生のほとんどが同じだし授業内容も同じ物が多い。その科が消滅してしまう可能性さえある。学校側の判断に任せる事にするか?
本来なら、ACCSに訴えるのが正しい対応だろう。
学校の良心に期待しよう。
--- 後日
学校は、ACCSに自ら訴えでた。
多額の賠償請求に関しては、免れたようだ。建築科の教師数名と、部活連の管理教師、ハンドボール部の監督及びコーチの首が飛ばされ、校長と副校長と、全日制の事務局長と事務局長次席が、役職応じた給与カットがなされた。
生徒としては、安倍は自主退学。その他の生徒に関しても、長い者で30日の休学処分。ハンドボール部は、やはり部室に大量のあってはならない物が存在していた。パソコンの中からは、無修正の動画。盗撮用のカメラまで有った。それらの購入資金は、上地が部活連の予算や生徒会の判子を偽造して作成した請求書から出ていた。
村上も、同じ事をしていた。学校は、二人を呼び出して、問いただした。認めなかったので、訴える事になってしまった。
そして俺は・・・
「校長!なんで俺が、部活をやっていない俺が、部活連の会長を兼ねないとならないのですか?だったら、部活連を潰して、生徒会に吸収させればいいと思うのですが?」
「篠崎くん。できない事を言わないで欲しい。生徒が作った規約は読みましたよね?」
「えぇ抜け道がないか、必死に探しましたが、残念ながらなかったです。唯一抜け道だったのが、生徒総会への吸収だけでしたよ。本当に残念な事にね」
「わかってくれて嬉しいよ。学校としては、どちらでもかまいませんよ?ただ、今後の事を考えると、吸収しないほうがいいでしょうね」
「嬉しいお言葉です。私もそう思います!よ!えぇ本当にね!」
「そうでしょう。キミが兼ねるのが落とし所としては一番なんですよ。私としては、鵜木先生の教え子の子供にこんな事を頼むのは残念ですけどね。キミがやらないと、桜君の娘さんがやることになるのですよ。次点は彼女でしたからね」
「はい。はい。鵜木さんの名前を出されたら、オヤジや桜さんに何言われるかわかりませんからね。やりますよ。やりゃぁいいのでしょ!」
「そうです。最初からそう言ってもらえればよかったのですよ。おかげで、克己くんや桜くんや、美和ちゃんに連絡しなくて済みましたからね」
ソファーに座りなおした
「校長先生。1つお願いと、1つお聞きしたい事が有るのですがいいですか?」
「えぇいいですよ。私にできる事なら、叶えますよ」
「ありがとうございます。まずはお願いですが、学校の中に、コンプライアンスを学べる場所を作ってください。外部から講師を招いて、月に数回教員全員と事務員全員と希望する生徒に受けさせてください。”科を作れ”は、無理だと思います。部活という感じでもないので、講習会とかになるとは思いますが、できますか?」
校長は少し考えてから
「いいでしょう。講師は、克己くんか、美和ちゃんに頼めば出てきますよね?」
「はい。大丈夫だと思います」
「それで聞きたい事とは?」
「簡単な事です。オヤジと桜さん・・・それに、美和さん。あと、真一さん。あと、安城幸宏さんと、井原聡子さん」
なにか知っているのだろう。
「あと、朝日由紀さんは、どういった方たちで、オヤジたちはどうして、ここまで結束が固くて、それでいて、その業界である程度の認知度が有るのですか?」
校長は、かけていたメガネを外した。
「篠崎くん。それは、私の口から言えません。私が・・・僕が、しっかり、彼らを、いや、彼女たちを見ていたら、違った結果になったかも知れない。僕たちは、そらしては行けない事から、目をそらしてしまった。だから決めた、森下桜が、僕の所に来て、”警官”になったと言った時に、僕たち大人が目をそむけた事を見続ける事に・・・申し訳ない。僕の口からは、これ以上は言えない」
「長嶋校長。校長も、関係者なのですね?」
「そうです。ただ、僕は運が良かっただけです。桜くんに、克己くんに、救われたのです」
「わかりました。ありがとうございます。オヤジたちも、2年後に話してくれると約束してくれています。それまで待とうと思います」
「そうか・・・あと二年だったな。克己くんと桜くんに、その時には、僕も行きたいが問題ないか聞いておいてくれないか?」
「わかりました。それでは、校長。よろしく願いします」
「あぁわかった。キミにも苦労をかけるが、今切れるカードでキミが最大戦力なのだ。済まないが踏ん張ってくれ」
「えぇわかりました。俺は、俺のできる範囲でやってみます」