マシュマロベイビー
紅葉は若業最寄りの駅で
降り立った。
…どうしよう。
気持ちが奮い立ってる、いま!
いま、奏ちゃんに会いたい。
そう思って来たけど。
奏ちゃんに会いたい…けど!
駅で待つ?
学校の近く?
ケータイに連絡してみる…?
どうしよ。
迷いながら、紅葉は改札を抜けて
歩き出す。
どっか、コンビニとか?
学校の近くのとことかで…
奏ちゃん来たら
声かける?
考えながら、歩いていた紅葉。
さーっ。
いつのまにか
夏の終わりを告げるような
涼しい風が
前から吹き付けて
紅葉を通り過ぎていく。
ドキドキ。
緊張する胸を抱えて
歩き続けていたら…
若業の門近くまで来てしまった。
いや、ここは
ダメだよね。
奏ちゃんもこんなとこで待たれてたら
恥ずかしいよね。
通る人に見られるし。
若業生が、めっちゃ通る。
そう思って後ろを振り返った
紅葉。
「ゲッ!!」思わず心の声がもれる。
なんで!!
いま紅葉が登ってきた坂道。
そこを、下から若業生の群れが
まさに登ってくるところ。
その幅広な一本道を
闊歩する
横に広がる見渡す限りの若業生。
ゾロゾロ。ゾロゾロ。
もちろんみんなすごく…ガラが…。
さっきまで誰もいなかったから、
普通に歩いて来れたけど、
こんなにいたら
絶対
来ていなかった紅葉。
あ〜っ!
若業は始業が遅いから
今からが通学時間なんだ!
どんどん上がってくる若業生。
いやー。どうしよ。
横道もない一本道だし!
隠れる場所も…無くない?!
絡まれる自分が容易に想像できる紅葉。
このダンジョンレベル
クリアできる自信なし!
紅葉はとっさに
そこしかないから
坂道の端に等間隔に並び生えている
大きな木に隠れた。
ううー。みんな真横を通っていくのに
隠れられている気もしないけど
なんとか
なんとか…乗り切れますようにー!!
…もうー。
奏ちゃんに会いにきたのに。
奏ちゃんに伝えたいのに。
なんて、かっこ悪い展開!
奏ちゃん通ったらどうしよ。
会いたいけど
ここじゃ…いまは…
かっこ悪すぎて…
紅葉がそう思った
そのとき
「みーつけた♫」
その声と同時に横に人の気配。
ガシ。
紅葉の肩は簡単にピックアップされた。
「オンナ発見ー!」
ギャーっ。
声にならない紅葉のこころの叫び。