マシュマロベイビー

走れモエ




そんな紅葉(もみじ)



ファイトをまだ



知らない萌。




バタン。



バイト終わり



着替えた制服を入れて、



ロッカーのドアを閉めた。



紅葉どうしたんだろ?




今日学校休みで



ラインも既読がつかない。



風邪かな。大丈夫かな…。



はー。



いつもの日常のなか。




バイトで忙しくしていても




お風呂の中で




何も考えていないみたいに



ぼーっとしていても




何をしていても。




気づくと



どこか、なにかを



置き忘れているように




胸のなかが寂しくて




痛い。




どうしたら



良かったんだろう。




あのときに戻れるなら。





何て言えば良かったんだろう。




振り返っても、正解が



わからなくて



どうしようもないのに…。




駅のホームで。




学校の坂の下で。




バイト先の裏口で。





…わかっているのに、




自分の視線は彷徨って(さまよって)





悲しくなるだけ。





だって…




私なりにだけど、




いつも




一生懸命




伝えたつもりなんだけどな。




恋がヘタすぎて




笑い話にもできないよ。




ガチャ。




ため息とともに



バイド先のドアをあける。



いつものように、少し彷徨う視線。




わかっているのに、また




胸は1回目みたいに、寂しくなる。




あからさまに元気のない足で



帰ろうとする萌に



「あ。今あがり?



お疲れさんー」



出先から戻ってきた店長が



店のジャンパーを羽織りながら



萌のいる裏口に歩いてきた。




「あ。お疲れ様です。」




頭を下げる萌をみて、




自分の背後を、振り返る店長。





「最近、彼氏見ないね?」





「え?あ、



いや。はい。



彼氏じゃないんです。



…トモダチです」



萌が答えると。




「え。そうなの?



あのオトコの子だよ?若業の」




声はなく、うなずく萌に




「そうなんだー。



てっきり、彼氏だと思ってたよ。



いつも、迎えに来てたし。


あの、ほら



僕がキミをクビにしかけたときも



すごかったし。必死で…。





いや、ほんと、若業生だし。




最初はこっちも脅されるのかなんて




身まがえたけど、



ほんと、しっかりした子だよね。




僕もつい、クビだなんて



先走っちゃって。



良かったよ。彼が…」





店長はまだ続きを喋っているけど。






「え?…



何のことですか?」



萌の言葉が店長の話をとめる。




だって、あの日?



アラタくんとはじめて会ったあの日。




あの日は、家まで送ってくれた。




そのあと…?


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