マシュマロベイビー
アラタが言う。
「も、萌?
おれ…
えっと、なに?
おれ、怒ってて」
俺の言葉が届いているのか、
おれをまだ
とろんとした表情で見上げている
萌。
「…うん。」
やっと言葉を発した萌が言う。
「すき」
萌の表情は変わらなくて
キスの余韻を引きずったような目をして
俺を見上げたまま、そう言った。
「え?」
正直、この前から
もうだめだと思った。
合コン見られて、
言い訳もさせてもらえなくて、
あげく
触らないでって。
嫌われて
もうおれはいらない。
そう言われたと思った。
おれは
すげえ。
もう、萌にはまってて。
オトコ嫌いだって、わかってるのに
意地っ張りで、抜けてて
ギャップが、すごくて
自分のかわいさ
よくわかってない萌にもう
夢中で。
けど、そんなおれの恋心が、
トモダチって免罪符利用して
萌のそばにいたいって
おれのずるいとこが
ばれて
〝もういらない〝
そう言われた気がした。
それでも。
萌が心配で…
知らないフリできなくて
萌のバイト帰りの時間。
ほんとは、一緒に電車乗ってた。
バレたら、マジキモがられるかも。
とか
おれ、やべえやつじゃん。
とか、思ったけど。
そんでも、やっぱり…
萌が心配で。
今日はいつもの時間に
萌が来なくて
見失ってたら
案の定チカンに捕まってるし。
それで、今までの人生で
ベスト3に入るくらい
キレてたのに。