マシュマロベイビー




ピンポンパンパパパン。



来客の合図のチャイムが鳴った。




萌は



「いらっしゃいませー」



引きつった顔で、入ってきたお客さん



に声をかけた。




萌がバイトしている駅前のカフェレストラン。




アンジェリーナ。



紅葉とシフトがずれて



萌は1人バイト中。



終わりまで後…1時間だ。



もうちょっと!!



ガンバレわたし。



…今日は



うううん。昨日から



気分は最悪。







ママとは大げんか。



バイトに来る電車の中では



昼間なのに



痴漢にあった。




そのうえ、さっきは…




もう、思いだしたくもない。




ピンポン



お客さんがボタンを鳴らした音。




萌は、ハンディを手に




テーブルに向かう。




座っていたのは



男子高生の集団。



6、7人?くらいいる。



よりによって…



派手で、騒がしくて…サイアク。



でも、仕事だからっ!




ガンバレ!わたし!




「ご注文はお決まりでしょうか?」



萌は視線を合わせないまま、誰にともなく




言った。



1番手前に座っていたツンツン髪の茶髪の




男の子が、スマホをマイクに見立てて



「何カップっすか?」



笑って言ってきた。



「待って、待って



当てる!…Eじゃね?」



長身のロン毛が一緒に騒ぐ。



「ばっか。お前失礼だって



Gくらいありそう。」




なんて、勝手に盛り上がりだした。



正直、こんな感じ



され慣れている。



けど、今日は…もう、キレそう。



何とか…



相手はお客さん…!



って、こらえて。



「…ご注文がお決まりになったら


お呼び下さい」



その場を離れようとした萌に



「うそうそ。下品でごめんね。



待って、待って。そんな怒んないでー。



俺ら、男子校で。



女の子に慣れてないからさ。



悪気は無いんだよー。




かわいいから、話したかっただけなんす!」



萌の胸のネームプレートを見て。



「名前はー、えっと、板垣さん?



彼氏いる?」



仕切り直したように、話しかけてきたのは



薄茶色の髪に派手な赤ライン入りヘアバンド。



丸顔のちょっと童顔でかわいい感じの男の子。



でも、萌は



もう限界だった。



「…」



萌のつぶやきに



「え?」近づいて聞いてくるヘアバンド。



「…慣れてないから、何でも言っていいの?」




萌の視界の端に男の子たちの学生カバンが



目に入った。



このマーク…若松工業。



萌の口から、勝手に言葉が出た。




「若業なんて…




ガサツでバカで




ガラ悪くて、大嫌いっ」



何でか



萌の口から、紅葉の言ってた言葉が



スラスラ、そのまま出た。
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