マシュマロベイビー



ほてった肌に



冷たいシャワーが当たって、



ベタついた塩水を落っことしていく。



今日活躍してくれた水着から




洋服に着替えたら



疲れた身体を包むのは、



もうさっきまでがすっかり



過去になったような別な空気感。



そんなことにまで



心が寂しがってるみたい。



なんてセンチなこと思いながら



紅葉(くれは)たちは



外で待っているアラタたちの



ところへ急いだ。




海沿いの道路。




ガードレールに腰掛けている奏たち。



「帰ろっか」



笑みを浮かべたアラタが言った。



急いだからか、前を行く萌の




カゴ型のショルダーバッグから



日焼け止めがポロって落ちた。



あっ。って紅葉が拾う前に



「萌。」



奏が萌を呼び止め、拾った。



「あ、ありがと。」



そう言って振り返った萌のバッグから



今度はアメの袋が落ちて、アメが



バラ撒かれた。



「イヤイヤイヤ」



って言いながら拾って



「ドジっ子か」



奏が萌に笑った。



あれ…



チクン。



紅葉は



ちょっとショック受けてる自分に



気づく。




だって、奏ちゃんって



萌には



そんな…やわらかい反応?



もしかして、



トモダチに成れてないのは




‥わたしだけ?



萌のことは、萌って呼ぶんだ。



しかも、あんな笑いかけて…



萌には優しいんだ。



あたしには…




あたし、名前呼ばれたことさえないと思う…。




っていうか…トモダチ以前に



わたしって



やっぱり



嫌われてる…よね。


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