マシュマロベイビー
わたし、
情けない顔してたのかも。
海と気怠さのせい?
日が落ちて、オレンジが強く
当たりを染めていた。
塩水のせいで少し赤くなってる
奏の目が
ジッと
わたしを見つめていたせい?
ただ雰囲気のせい?
わからないよ。
なんだか奏ちゃんから目がそらせなくて
奏ちゃんも、わたしを見てる。
まわりの音が消えたみたいに
自分の高鳴る鼓動の音と
呼吸音だけが聞こえて
奏ちゃんが
わたしに
キスをした。
ジッと見つめられて
気がついたら
奏のくちびるが
わたしに触れていた。
え?
何?
そう思った紅葉だけど
何でか、動けなくて…
閉じられた奏の目が
また、ゆっくり開くのを
時が止まったように見つめていた。
視界に近い
日に焼けた奏の肩が動いて
いつのまにか腰にある奏の手に
もっと引き寄せられて
2回目のキス。
少し濡れた奏の前髪が
紅葉のおでこに当たって
んっ。
奏が、
閉じてた紅葉のくちびるを
甘噛みするみたいに刺激するから、
プニってゆるんだ紅葉のくちびるに
キスを深める。
んーっ。
気づいたときには
身体が奏の腕に抱きとめられていて
頬には奏のごつってした指。
動けない紅葉。
強引な奏のくちびるに
時が
空間が
紅葉たちのところだけ
止まったみたいに
ぼんやりして
夢中になりそうになる。
負けそうになる。
けど…
そのとき、紅葉の脳裏に
どんなに簡単に紅葉が落ちたか
笑う
先輩の声が蘇った。
「やっ」
当たり前のように
紅葉に触れていた奏の手を振り払って
バチンっ。
紅葉の手のひらが
奏の頬で大きな音を立てた。