マシュマロベイビー
人気のない廊下を
奏ちゃんの背中を見ながら歩く。
グランドを見下ろせる廊下に差しかかったとき
ちょうど空いた窓から外の喧騒が入ってくる。
さっきまでとは違う大きな歓声。
「お?」
奏が窓から外を見る。
「あれ?
アラタじゃね」
「え?」
紅葉も奏の横から窓の外を眺める。
グランドで、何だろ
障害物競走みたいなのやってる。
…それにしても、すごい盛り上がり。
ギャラリーの数と。応援?
がすごい。
「アラタくん、どこ?」
「あれ。
今袋入った」
「アラタくんが出てるなら…
萌は?
萌、大丈夫かな」
「アラタが出てるってことは、
たぶん近くで
コウタとかがガードしてんだろ。」
(奏、大正解)
わー。
外の盛り上がりと一緒に
紅葉たちも思わず
大きな声が出る。
「キャっ。
やだ。こけちゃった?アラタくん。
大丈夫かな」
「おらーアラター。
いけー」
カッコよくゴールテープをきった
アラタくんに
「っしゃーっ」
そう言って、奏ちゃんが
笑顔を紅葉に向けた。
だから、フイにそんな
かわいい笑顔見せないで。
ドエスのくせに。
こんなにドキドキばっかりさせないでよ。
…違うか。
もう、外に視線を向けている
奏ちゃんの横顔みながら
紅葉はわかってしまう。
わたし。奏ちゃんが何もしなくても
一緒に
こうやって、まるで外とは
打って変わった静かな廊下に
2人だけみたいに
奏ちゃんといるだけで
きっと、ドキドキする。
だってね。奏ちゃん。
わたし、今日ここに来るのに、
先輩のことなんて
何も思わなかったの。
ただ、奏ちゃんに
お礼が言いたくて
奏ちゃんに
会うために来たの。