マシュマロベイビー
教室の中は、
縁日の準備で使ったのか
ガムテープや、段ボールの切れ端が
いろんなところに
散乱している。
机は教室の後方に
乱雑に集められていて、
窓際付近の机には
段ボールが、いくつか
積まれていてパーテンションのように
仕切られ、向こう側は見えないくらい。
ドキドキ。
もうずっとやまない
心臓の音が
萌を困らせる。
パッって、タオルを外したアラタが
髪を拭きながら
「ちょっと、待ってて」
そう言ってバックを持って
仕切りの向こうへ行った。
視線を微妙に外したままの萌は
え?
戸惑うだけ。
そんな萌の耳に、アラタが
服を脱ぐ音が聞こえた。
パサ。
あ。着替えるんだよね。
びしょ濡れだもんね。
着替えてるんだよね。
向こうでね。
…。
…。
入り口で動けないままの萌。
…って、あたし、頭おかしいのかな。
何で、こんなに
意識、しちゃうの…。
何か、身体は
熱くて
肌がピリピリするくらいで。
空気が濃くなったみたいに、
感じてるのに。
呼吸は逆で、
空気が薄くなったように
息がしずらくて…
何でか、
すごく…
…恥ずかしいっ。
何で?
アラタくんは向こうで
ただ、着替えてるだけなのに
私たちは教室の端と端にいるのに
アラタくんが
ここに、いるみたいに
空気が熱くて…
自意識過剰?
はっ。
無意識に
アラタくんが掴んでた自分の手。
胸に抱えてるし!
萌は両手で自分の顔を覆った。
ガサって、
シュルって
衣擦れの音に
ピクン。って
反応する自分の身体。
…わたし、もしかして
エロいの?
カア。顔がもっと赤くなる。
何なの?
うー。
自分でもわからない
こんな自分
アラタくんに見せたくないよっ
「あ、あの。わたし
ちょっと出てるね?」
萌は、小声でそう言って
教室のドアに向かおうとした。