幼女総長と不良たち
お腹から見え始めた無数の咬み痕。
胸に、脇に、肩に、
いつのだろうか、完全に変色してしまっている。
時間が過ぎたからというよりも、幾度となく同じ場所を咬まれてきたといった方が正しいかもしれない。
「力の強いボクが、抵抗しないよう、ベッドに鎖で繋いでね。
パパは、ボクの血と身体を売ったお金を持って、どこかにいなくなることもよくあった。」
コクリと唾を呑み込む。
斜め下に目をやると、ベッドに置くハン君の手がぎゅっと波打つシーツを掴んでいる。
いつからだろう。
いつからハン君は、ヴァンパイアに身体を咬まれ、貪られてきたのだろう。
「この世のヴァンパイア全員死ねばいい」と言っていた理由がここにあるのだと、ハン君のシーツを掴む手から伝わる。
「ネットの世界だけが、ボクの居場所だった。」
「・・・・・」
「ハッキングをして、同じ"狂喜の血"を持つ仲間を探すうちに、君を見つけた。」
私に興奮しているような顔を落とすハン君の瞳がくるりと揺らめく。
「息を呑んだよ。」
感嘆するような彼の溜め息が私の身体にかかる。
それは吐息のようにも感じてしまう。
でも次の言葉で、私は恐怖から憤りを感じることになる。
「ボクと同じ境遇の、かわいそうな女の子。」
「・・・・っ」
彼が途端に同情の瞳を私に向ける。
違う、
同じじゃない───!!
母は最初から居なくて父親に捨てられたとしても、私はずっとずっと今まで幸せに生きて来たんだ!!!!
「君は、たった一人の家族に、捨てられたんでしょ?
・・・かわいそうに。ボクと同じで、とってもかわいそう。」
ハン君の言葉が私の記憶を抉り出す。
思い出したくもない遠い昔の過去が
甦って来る。