幼女総長と不良たち
いいんじゃないだろうか。
もういっそ、このまま私が殺されればハン君は報われるし、これ以上傷付く人もいなくなる。
私も1年前の後遺症から解放されて、皆も私から解放されて────
そうか。
私はもしかしたら、ハン君に殺されるために小さくなったのかもしれない。
力の無い、何も出来ない小さな小さな子供に。
納得出来る応えがようやく見つかった。
ナイフを振り下ろされる寸前の私の顔がきっと酷く落ち着いていたのだろう。
ハン君が不意に哀しさを撒き散らしたようなやるせない表情になった。
「ッ駄目だ!!!!」
仰向けのまま右足を浮かせた里桜がハン君の頭を横から蹴った!!
「っっ」
ハン君が蹴られた衝撃で横に倒れる!
里桜が肩を抑えながらも瞬時に私の前に来て膝を付く。
背中のシャツが血と汗でべっとりと塗れていた。
「り、りおー・・・」
「・・・大丈夫だ、心配すんな・・・。」
呼吸がさっきよりも荒い。
震える里桜がズボンのポケットに手を掛けた。
ハン君が素早く起き上がると再び里桜目掛けナイフで心臓を狙う!
でも里桜が咄嗟にズボンから出していたスプレーでハン君目掛けて一気に噴射した!!
「ぐわあッッ」
目を両手で抑え、ハン君が床にうずくまる。
───催涙スプレーだろうか?!
自分より強い相手には有効な手段だと瞳子さんから聞いたことがある。
「・・・二越の兄貴に・・・使えって渡された・・・」
里桜が後ろ手に私にスプレーを渡してきた。
さすが洸太郎。
ちょっと卑怯な感じが否めない。