幼女総長と不良たち
目の前で私を吊るし上げる男がナイフの刃を自らの腕に当てた。
スぅっと横に切り傷が入ると彼の血が滲み出る。
血のついたナイフをそのまま地面に勢いよく突き刺すと、肘を曲げ私の身体を引き寄せる。
こいつが「伊東織果とは本当の姉妹なの?」と言った意味が今になって理解できた。
つまり「本当の妹」であれば私にも「狂喜の血」が引き継がれているはず、
だから血を飲んで自らの傷を治せるのかを試すということだろう。
でも残念ながら「狂喜の血」というのは血縁関係に引き継がれるもんじゃない。
ある日突然産まれた子がたまたま
「狂喜の血」を持っていた、というのが本来の在り方だ。
つまり私は奇跡的な存在。
そのせいで母親は死んだのだと昔父親に言われたのを今でも覚えている。
別に血を飲まれることに恐怖はあまり感じない。
なんせ4人に飲まれ慣れているから。
ただ知らない男に無理矢理肌に牙を立てられることに憎悪を感じる。
信頼関係も何もない不法侵入の不審者。
むしろこいつとの関係は出発点からすでにえぐれているのだから。