幼女総長と不良たち
「・・・服は?これしかないの??」
ハン君が私を横に抱いたまま靴を脱ぎ部屋の中へと上がる。
机の上にある私のスマホを取り、何故か自身のポケットに入れた。
そしてカーテンレールに掛かるハンガーのフリフリの服を見ると、目を細めて言った。
「・・・何この服・・・趣味悪いね。」
ハン君はいつも独特の間で柔らかい口調のはずなのに、今の言い方は何故か少し怒っているように感じた。
「・・・それにやたら臭うよ部屋。・・・醜悪な臭いがプンプンするね・・・。」
レディの部屋を醜悪とは失礼すぎるだろう!
でも私に目を落としたハン君は怒っているような表情ではない。
かといって不気味な感じでもない。
「ねえ、せっかくだからこのまま伊東さんの服買いに行こうよ。
ボク子供の服、ちょっと見てみたいな。」
ただ柔らかく甘い、いつもの優しいハン君の顔だ。
「・・・ねえ洸太郎、ちょっと子供服のお店寄ってよ。」
ハン君が外に立つスーツの男に話し掛ける。
うちの庭でけだるそうに腕組をする男が面倒くさそうに口を開いた。
「子供服??
というかなんで伊東織果がそんな小さくなってるのかハンは疑問に思わないの?」
「なんで?だって、伊東さんだよ??"狂喜の血"を持つ神がかり的な存在なんだもん。
どんな姿であろうと関係ないよ。」
「大体なんでその子供が伊東織果だと分かるのかも俺には謎だよ。」
「あはは」と軽く笑うハン君が私を抱え直し、私の胸元に顔を近付けた。
「・・・分かるよ。
ボクは"狂喜の血"の匂いじゃなくって伊東さんの匂いが好きなんだから。」
ハン君の甘い吐息がTシャツから晒された肌にかかる。
因みにふいのキスもこういった距離感もハン君はいつものことだ。
今私が”小さい"からじゃない。大学生の私に対しても普段からこんな感じなのだ。
ハン君の天然な性格のものからなのだろう、と私は勝手に思っている。