諦めた心

家に着き
兄に部屋まで運ばれて
「ゆっくり休め。」
と、言われた。

母の顔·······

兄の日和の顔·······

怜の顔と言葉··········が····

ぐるぐると
頭の中で回り続け
思考を奪って行った

今が何時かもわからない······

【 母さん・お兄ちゃん へ

辛い思いをさせて
ごめんなさい。

悲しい思いをさせて
ごめんなさい。

父さんみたいな、立派な人を
私なんかが汚して良いわけないよね

父さんに謝れるかな

           一華 】

何を書いてるのか
支離滅裂な文章に
笑いがもれる。

こんな時に笑える自分は
おかしいのだと思う

家の中は、シーンと
静まりかえっていた。

私は喪服のまま
そっと家を出た。

母や兄が、どれだけ
心配するのかなんて
考える事も出来なかった。

父のお墓に行き
父さんにもう一度謝った。

謝ってすむことでは
決してないが······

それから、一度だけ
怜に連れてきてもらった
砂場に腰を下ろして
海をみていた。

暗い海が
月の光で道を作っていた

その道へと
吸い込まれるように

歩いて行き······海の中に·····消えた·······

····11月の····海は······つめた·····かった·····
< 10 / 49 >

この作品をシェア

pagetop