諦めた心
⑤··菫(母)
夫に何度も何度も
数えきれないほどお願いする。
「一華を助けて
一華を連れていかないで
一華を目覚めさせて。」
と、毎日毎日、何度も何度も
今日も祈りながら
「一華、夏になるわよ。
早く起きないと泳げないよ。」
と、窓を開けて、
ゆかりちゃんから貰った
花を触りながら、話していると
「·······カア·····サ·····ン······」
と呼ぶ····細い声に
振り向くと
目を開いたり、閉じたりしながら
私を見ている一華と目があった。
私の瞳から涙が溢れ
一華を抱きしめた。
「ゴメン·····ネ······」
と、言う一華に
はっとして
頭を撫でながら
「先生、呼ぶね。」
と、言ってナースコールを
しながら
「お兄ちゃんにも連絡してくるね。」
と、言うと一華は僅かに頬えんだ。
この日を、どんなに待っただろう
ありがとう、あなた。
本当に、ありがとう。