諦めた心

⑥··怜


離れた席にいたが
日和の【一華】と言う
言葉が耳についた。

直ぐに教室から出ていく
日和に、どうしたのか
気になり、口が開く
「日和!」
だが、日和は、
ふりかえる事なく走り去った。

俺もその後を追う

車に乗り走り出す日和
俺もバイクに股がる

着いたのは総合病院だった。

日和は、一つの病室に入って行く

誰の病室か記載は
なかったが·····

ドアのそばに行き
少しドアを開ける·····と

泣いている女の声

身体の事で泣くな
と、言う日和。
そして、不自由があるなら
代わりをすると言う。

何を言ってる?
泣いているのは
一華なのか?
·····どうなっているんだ·····

やはり、あの時、聞いたのは
一華だったのか?
日和に知らせはしたが
自信はなかった。

もちろん、日和から
一華だったと言う報告もなかった。


俺が、一華らしい女性が
島の曽我屋病院にいると
知ったのは偶然だった。

一華の行方がわからないとかで
一華の仲間が探していると
噂が耳に入った。
それに、日和も度々
教室にいないし····


先生の納骨も済ませたはがりなのに。
家族に迷惑をかけるなんて
なんとおろかな、バカな女だ
と思っていた。

納骨の時に
奥さまに、あなたに何がわかるの
と、言われたが
わかる必要はない。

目印で目標だった
先生を失った俺には
なにもなくなってしまった。

日和に、家にも先生のお墓にも
近づくなと言われ
しばらく、その場から
動けなかったが·····


先生も友人も失った。
全て、あいつのせいだと
その時、俺は思っていた

だが、日に日に憔悴して
いく日和を
大丈夫なのだろうかと
気になっていた。

そんなとき
飲みに誘われていった居酒屋で
聞こえてきた話しは·····

私の親戚がいる島に身元不明の
女性がいるみたいなの
警察にも問い合わせをしている
らしいけど

と、聞こえて

その女性の歳がわかるの?
と、訊ねたら
大学生位だって。

なぜ、身元がわからない?
と、訊ねたら

何も、身元がわかるものを
もっていないみたい。

見つかったのは
二ヶ月か三ヶ月前みたいだけど

と、言う話が聞こえて
もしかして······
と、考えて日和に連絡をした。


一華に告白され
日和の妹であるし
先生と接点が持てるし
家にも出入りできる

それに、女からの呼び出しも
うざかったから
彼女がいることで回避もできる。

ただ···
そんな気持ちだけだった······

一華の事を
大事にするとか
大切にするとか
まったく、考えていなかった。

ドアをそっと閉めて
俺は病院を後にした。


この後、おれ自身に
思ってもいないことが
起こるとも知らずに···
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