諦めた心
大学の生活は、
やはり大変だった。
杖をついているのが
珍しく、最初は気を使われていたが
慣れてくると
ぶつかられたり·····
遅いから邪魔だと言われたり····
旭がその場にいると
言い返してくれていたが
「本当の事だから大丈夫だよ。」
と、旭には伝えた。
旭がいないと
露骨に接してくる人達もいた。
やはり、無理なのかな
と弱気になっていたとき
「一華、たまにはさぼろうか?」
と、旭が外に連れ出してくれて
「一華、辛い?
辛いなら辞めてもいいんだよ。
俺が一華の分も頑張って
検事になるから。
そんな俺の隣に居てくれたら
それでいいんだ。」
私は、何も言えずに黙っていると
旭は、改めて私の両手を取り
「一華、
一人になりたくなったら
必ず俺に教えて。
俺は、決して一華を一人にはしない。
一華が、もう人生に疲れた
未練はないと言うなら
一緒に行く。だから必ず言って欲しい。」
と、言った。
私は
「ありがとう。」
と、答えるのが精一杯だったが
気持ちが軽くなっていくのが
わかった。
帰宅してから
兄と約束した通り
兄に今の気持ちを話して
旭に助けて貰った事も伝えた。
兄は、旭に感謝しながら
一華のいく末をゆっくり
決めて行こうと言ってくれた。
それから、何度も兄と母と話し
父の友人の弁護士の先生や
検事の先生とも
話させて貰ったりした。
こんな私なのに
なんと恵まれているのかと
思わずにはいられなかった。
大学を卒業するまで
幾度かの挫折や諦めも感じた。
その都度
ゆかりや旭が支えてくれて
兄や母が、
いつも私が
居心地の良いようにしてくれた。
大学院は、
違う大学系列へ行く事にした。
教授から推薦をもらい
二人は先に入り
私は一年遅れて院へと入学をした。