諦めた心
⒐温かい場所

一華は、温かなものに
包まれて、夢心地から
目をさますと···ん?
「熊先生?」
「あっ、気づいたか?」
「わた····し····
そうだ、怜とあって
「思いだしたか?」
と、言う熊先生に
頷くと、頭を撫でられた。

兄の声が聞こえる

私の身体の話をしてる·····

熊先生は、私の顔を切なげに見て
「大丈夫。」
と、言ってくれた。
本当に、とっても優しい人だ。

先生に下ろして
と、伝えると
少し困った顔をしながら
下ろしてくれた。

私は、先生から杖を貰い
先生の顔を見て
一度、頷くと
熊先生も頷いてくれたから······

歩いて、お兄ちゃんの所に行き
「お兄ちゃん!」
と、呼ぶと
兄は、直ぐに振り向き
「大丈夫か?」
と、言うから
「うん。心配かけてごめんなさい。
熊先生が支えてくれたみたい。」
「ああ。」
と、微笑む兄に
私も微笑み
兄の向こうの人を見ると

唇に手をあてたまま
目をきょろきょろさせる、大賀さん。
動揺·····と····落胆·····
そんな怜、大賀さんを
私は、始めて見た。

「大賀さん。
あの時、好きでもない
私に付き合わせてしまい
すみませんでした。

バカな私は、好かれても
いないとわかっていながら
いつかは····と考えたり
あなたの大賀 怜の彼女と
言う名前に浸っていたかったのです。
だけど今は、そんな気持ちは
まったくありませんから
父のお墓にも
参ってあげて下さい。」
と、言うと
「一華!」
と、心配声の兄に
「大丈夫。私は、もう大丈夫だよ。
私の大好きなお父さんのお墓を
そんな事で規制したくないの。」
と、言うと
兄は、
「まったく····」
と、呆れていたが

大賀さんから····

「すっ、すまない。
こんなことに····なって····る·····
なんて·····俺はっ·······」
と、頭を下げる大賀さんに
「私が勝手に傷ついて
勝手な行動しただけです。
そのため沢山の人に
心配をかけてしまいましたが。」
と、伝えると
首を横にふる大賀さん。

私の横に大きな影ができて
見上げると
熊先生が笑ってくれた。

その顔をみるだけで
幸せになる。

だから、つい····手を差し出し····
すると熊先生は
か~るく抱き上げてくれて
「日和、一華の杖」
と、熊先生が言うと
お兄ちゃんがムスッとしながら
杖を持ってくれたから
「ありがとう。」
と、私が兄にお礼を言うと
「一華。
哲也さんじゃなくて 俺に言えよ。」
と、言うから
「やだっ、兄妹で。
私は、熊先生じゃなくて
てっちゃんが良いの。
ねぇ。」
と、てっちゃんを見ると
真っ赤になっているから
つられてこっちまで
赤くなってしまった。

すると、てっちゃんが
「一華、早く嫁に来い
俺も待ちくたびれたわ。
旭なんかに譲るんじゃなかった。
あのアホ人間が。」
と、言うてっちゃんに
私は、笑いが出て
「クスクスっ、良いの?てっちゃん
私、こんな身体だから
家の事もできないよ。
それに、てっちゃんの赤ちゃんも
産めないかもよ。」
と、少しお茶らけて言うと
「はぁっ、お前、バカだろ。
俺は、家事のできる人が欲しいん
じゃないぞ。
一華だから一緒にいたいんだ。

子供ができなくても
できても一華に対しての
愛情が変わると思ってんのか?

やはり、あの時、旭になんか
譲らずに、とっととかっさらって
嫌と言うほど甘やかしとけば
よかった。

そしたら、俺も婚期延ばさなくて
よかったのに。」
と、ブツブツ言う哲也さんに
「じゃ、じゃさ。
てっちゃん、私を貰って
幸せにして。
だけど返品不可だからね。」
「するか、返品なんか
一生、大事にして
甘やかして、愛し抜いてやる
一華の方が根をあげるなよ。」
と、てっちゃん事、哲也さんが言うと
一華は、ポロポロと涙を流して
うん、うん、と頷いていた。

そんな一華と哲也さんを
羨ましそうに怜は見ていた。
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