Bed scene stories #01
なにかの気配で目が覚めた。かすかな衣ずれの音。

自分が寝てしまったことすら気づかなかった。無意識に手を伸ばし、そこにいるはずの温かな身体を探す。でも手のひらに伝わってきたのは、シーツに残るあなたの体温の残滓だけ。手をついて、快感の残り火が揺らめいている気怠い身体をベッドから起こす。

あなたはちょうどネクタイを結んでるところだった。そのバーガンディのネクタイは、去年のクリスマスに、わたしがあなたにプレゼントしたもの。結び終えたら、あとはスーツの上着を着てコートに袖を通せば身支度は終わってしまう。

「もう帰るの?」
「ああ。もう時間がない」

そう言いながら、きちんと結び目を作るあなたの指先に苛立ちを覚える。わたしを抱いているより、体裁を整える時間の方が大切なんだ。
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