反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~
周りを見て、壁際に控えていた侍女の一人に目を止める。
「お願いね。ああ、あなたにも祝福を。病になったときに、あなたにいじわるした人に病の半分を転移」
「あ、あの、なぜ、私に……」
目にいっぱい涙を浮かべている侍女に笑いかける。
「だって、赤ちゃんのことが心配でないてしまったんでしょう?口に手を当ててしまいそうになって、必死でその手を押さえてたんでしょう?声も出さないように唇もかみしめてたでしょう?指先は真っ白だし、唇は切れてるわ。ありがとう」
この異常な状況で、人として当たり前の感情を見せてくれた。赤ちゃんの身を心配してくれた人がいるのは救いだ。
この世界の人間すべてがおかしいわけじゃないと……。そう教えてくれた。
◆
「いいえ、聖女様……ありがとうございます。幼い命をお救いくださいまして……」
赤ちゃんを受け取ると、侍女が頭を下げた。
首を横に振る。
私もあなたも当たり前のことをしただけ。赤ちゃんを守りたいと思っただけ。幼い命に鞭を振る人間をにくいと思っただけ。
「ああそうだ」
当たり前のことといえば。
「お金ください」
黒装束の男に近づき手を出す。
「私に鞭を振り上げたんですよね?慰謝料いただきます。これ、恐喝じゃないですから。単に慰謝料。そうですね、全治2週間くらいの傷になっていたかしらね。病院に2回通って、そのときは仕事を休まないといけないだろうから、2日分の給料と、交通費。保険証はない世界でのことだから……実費で……薬代と。まぁ、ざっと5万円くらいになるかな。プラス精神的苦痛に対する慰謝料で10万。えーっと、こっちの世界でいえば、半月分の生活費?」
ガタガタと震えながらも黒装束の人間は素直にお金を私に出した。というか、お金が入っている巾着袋をそのまま私に差し出した。
「中身足りてる?確認もしてないけど」
と聞くと、激しく首を縦に振る。
「あなたは、私の額を狙って鞭を振ってきましたよね?顔に傷跡が残ったとすれば、半月分の生活費程度じゃ慰謝料足りませんけど。でもまぁ、それで手を打ちます」
黒装束の男が同じように巾着袋を私の手に乗せた。
もう一人。と、黒装束の人を見れば何か言う前に目の前に巾着袋が差し出された。
「お願いね。ああ、あなたにも祝福を。病になったときに、あなたにいじわるした人に病の半分を転移」
「あ、あの、なぜ、私に……」
目にいっぱい涙を浮かべている侍女に笑いかける。
「だって、赤ちゃんのことが心配でないてしまったんでしょう?口に手を当ててしまいそうになって、必死でその手を押さえてたんでしょう?声も出さないように唇もかみしめてたでしょう?指先は真っ白だし、唇は切れてるわ。ありがとう」
この異常な状況で、人として当たり前の感情を見せてくれた。赤ちゃんの身を心配してくれた人がいるのは救いだ。
この世界の人間すべてがおかしいわけじゃないと……。そう教えてくれた。
◆
「いいえ、聖女様……ありがとうございます。幼い命をお救いくださいまして……」
赤ちゃんを受け取ると、侍女が頭を下げた。
首を横に振る。
私もあなたも当たり前のことをしただけ。赤ちゃんを守りたいと思っただけ。幼い命に鞭を振る人間をにくいと思っただけ。
「ああそうだ」
当たり前のことといえば。
「お金ください」
黒装束の男に近づき手を出す。
「私に鞭を振り上げたんですよね?慰謝料いただきます。これ、恐喝じゃないですから。単に慰謝料。そうですね、全治2週間くらいの傷になっていたかしらね。病院に2回通って、そのときは仕事を休まないといけないだろうから、2日分の給料と、交通費。保険証はない世界でのことだから……実費で……薬代と。まぁ、ざっと5万円くらいになるかな。プラス精神的苦痛に対する慰謝料で10万。えーっと、こっちの世界でいえば、半月分の生活費?」
ガタガタと震えながらも黒装束の人間は素直にお金を私に出した。というか、お金が入っている巾着袋をそのまま私に差し出した。
「中身足りてる?確認もしてないけど」
と聞くと、激しく首を縦に振る。
「あなたは、私の額を狙って鞭を振ってきましたよね?顔に傷跡が残ったとすれば、半月分の生活費程度じゃ慰謝料足りませんけど。でもまぁ、それで手を打ちます」
黒装束の男が同じように巾着袋を私の手に乗せた。
もう一人。と、黒装束の人を見れば何か言う前に目の前に巾着袋が差し出された。