反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~
「何をしている!全然きいていないではないか!もっと強く打て!」
陛下の言葉に、一番初めに鞭を振った黒装束の男が再び鞭を振り下ろした。
赤ちゃんを抱いている腕に鞭が当たる。
「うわぁっ!」
その瞬間、鞭を振った男が鞭を取り落とした。
ああ。相当痛そうだもの。痛いんでしょう。
「ねぇ、陛下。私は聖女なの。どんな傷も病も毒もすべて瞬時に癒す力がある……なぁんて思ってたら大間違い。なんの犠牲もなく癒せる力なんて私にはない……」
顔を上げて、陛下の元へと歩いていく。
「何をしている、もっと痛めつけないか!鞭で足りないなら腕の一本も切り落としてやれっ!」
黒装束の男にではなく、陛下は護衛のために壁際に並んでいた騎士に命じた。
素直な騎士の何名かが剣先を私に向ける。
「陛下にそれ以上近づけば本当に切るぞ!」
と、脅し文句も無視してそのまま歩けば、剣を振り下ろされた。
「うわぁっ!」
カランカラン。
金属が床に落ちた音。
「だ、大丈夫かっ!」
「何が起きた」
「どういうことだ」
混乱する騎士たち。
そして、狐面と豚面の男たちは陛下よりも3歩ほど後ずさっている。おお、とんだ忠臣だこと。
「聖女は傷つかない。いいえ、つけられた瞬間にその傷は他者へと転移するみたい。私の持っている力は癒しの力じゃない。傷や病や毒を転移させるだけの力」
にこりと微笑みながらじりじりと陛下の元へと歩いていく。
先ほどまで泣き叫んでいた赤ん坊は、揺らしているうちに眠くなってきたのか静かになった。
「私に鞭を振り上げた人の背中や腕を確認すればいい。私につくはずだった傷跡があるはず。ああ、そんな確認しなくても、今そこで腕から血を流している兵を見れば証明になるのかしら?」
陛下の顔が青ざめる。
◆
「そ、そのものを捕まえて牢屋へ」
と、陛下が命じた。
騎士たちは一瞬戸惑ったものの、私との距離をじりじりと詰めてくる。
「ああ、そうそう。この力、相手を指定できるみたい」
赤ちゃんを落とさないように片腕にしっかりと抱き、もう片方の手を、腕から血を流している男に向けた。
「傷の半分は、命じた者に転移」
瞬間、陛下の叫び声が上がった。
「うがーっ、くそ、何を、一体何を」
「陛下っ!大丈夫ですか!」
ざわざわとざわめきが起こり、狐と豚が陛下に近寄った。
陛下の言葉に、一番初めに鞭を振った黒装束の男が再び鞭を振り下ろした。
赤ちゃんを抱いている腕に鞭が当たる。
「うわぁっ!」
その瞬間、鞭を振った男が鞭を取り落とした。
ああ。相当痛そうだもの。痛いんでしょう。
「ねぇ、陛下。私は聖女なの。どんな傷も病も毒もすべて瞬時に癒す力がある……なぁんて思ってたら大間違い。なんの犠牲もなく癒せる力なんて私にはない……」
顔を上げて、陛下の元へと歩いていく。
「何をしている、もっと痛めつけないか!鞭で足りないなら腕の一本も切り落としてやれっ!」
黒装束の男にではなく、陛下は護衛のために壁際に並んでいた騎士に命じた。
素直な騎士の何名かが剣先を私に向ける。
「陛下にそれ以上近づけば本当に切るぞ!」
と、脅し文句も無視してそのまま歩けば、剣を振り下ろされた。
「うわぁっ!」
カランカラン。
金属が床に落ちた音。
「だ、大丈夫かっ!」
「何が起きた」
「どういうことだ」
混乱する騎士たち。
そして、狐面と豚面の男たちは陛下よりも3歩ほど後ずさっている。おお、とんだ忠臣だこと。
「聖女は傷つかない。いいえ、つけられた瞬間にその傷は他者へと転移するみたい。私の持っている力は癒しの力じゃない。傷や病や毒を転移させるだけの力」
にこりと微笑みながらじりじりと陛下の元へと歩いていく。
先ほどまで泣き叫んでいた赤ん坊は、揺らしているうちに眠くなってきたのか静かになった。
「私に鞭を振り上げた人の背中や腕を確認すればいい。私につくはずだった傷跡があるはず。ああ、そんな確認しなくても、今そこで腕から血を流している兵を見れば証明になるのかしら?」
陛下の顔が青ざめる。
◆
「そ、そのものを捕まえて牢屋へ」
と、陛下が命じた。
騎士たちは一瞬戸惑ったものの、私との距離をじりじりと詰めてくる。
「ああ、そうそう。この力、相手を指定できるみたい」
赤ちゃんを落とさないように片腕にしっかりと抱き、もう片方の手を、腕から血を流している男に向けた。
「傷の半分は、命じた者に転移」
瞬間、陛下の叫び声が上がった。
「うがーっ、くそ、何を、一体何を」
「陛下っ!大丈夫ですか!」
ざわざわとざわめきが起こり、狐と豚が陛下に近寄った。