反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~
 研究するのか開発するのか、古文書でもひも解くのかその辺は知らない。召喚の術もどうやって得たのかも知らないし。
「3年あげる。3年の間に何とかして。3年間はあなたたちには何もしない」
 その言葉に、ほっと陛下が顔を上げた。
「ああ、何もしないというのは、あなたたちがすべきことをしている間はってことだから」
 陛下がぐっと表情を引き締める。
「元の世界へと送り返すための方法を、死に物狂いで探させると約束する」
 ふっと笑いがこみあげる。
「陛下ですよね?」
 この世界で失礼に当たるかどうかわからないけれど、日本ではしてはダメだと言われる行為。
 指を陛下に向けてさす。
 あえて、失礼だとわかっていてそうした。
 ……いいでしょう。赤ちゃんを平気で殺そうとする男だよ?これくらいの嫌がらせをしないと、本当に……殺してしまいそうだ。姿が見えなくなった途端に……目の前にいないときに……。だって、痛いの痛いの飛んでいけ!って思うだけで本当にそうなっちゃうんだから。
 剥げろ!って呪いの言葉程度のことなんだもん。うっかり、念じちゃいそうだ。
「あ、ああ……自己紹介もしていませんでした。聖女様。我が名はリューガ王国のハ……」
「名前なんてどうでもいいです」
 名前なんて覚える気はない。それこそうっかり「死ね○○」ってつぶやいたら死んじゃったじゃ洒落にならないので。覚えたくない。
「この国の王様で、後ろの人は宰相?将軍?偉い人なんでしょう?そういう人たちが『するべきこと』がわからないんですか?」
 じろりと、狐顔と豚顔の男をにらむ。
「苦しんでいる人を助けたいんですよね?そのために私を誘拐するくらい追い詰められてるんだから、必死で国民を救うためにいろいろするんでしょう?私、この国のどっかに3年間いますから。国民の声聞いてますから。王の施政の情報肌に感じて生活してますから。税金が不当に引き上げられるだとか、不作で飢え死にしそうな人がいる地域に支援がないとか、無駄な戦争を起こそうとしているとか、どっかの領主が不正をしているのに見て見ぬふりだとか、訳の分からない差別で人を罰しているとか……」
 なぜか話している間に陛下も狐顔も豚顔も青ざめている。
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