キミのことが好きすぎて
引き止めるためとはいえ、私は、今日初めて声を掛けた。
そのまま行かれてしまったら、私に引き止めるすべは持っていない。
どうかーー、無視しないで......。
「......当たり前だろ」
何言ってんだ、こいつという目で見られた。
でも、私の願いが届いたのか、ちゃんと答えてくれた。
まるで、冷たい風が通り抜けるかの様な視線もいい。
私は、胸がきゅんとする。
「悠真先輩、5分待っててください」
私がそう言うと、なぜ名前を知っているのかと驚いた顔をしていた。
もちろん、昨日悠真先輩が帰ってから、斜め前にいる先輩に聞いたからとわざわざ教えるつもりは無いけれど......。
「なんで、俺が待たなきゃいけないんだ。第一、俺はお前に用なんかない」
そりゃそうだ。
私が話したいのだから。
悠真先輩は用が無いだろうけど、私はあるのだ。
待っていてもらわないと、私が困る。
なのに、先輩はさっさとプリントを提出して教室を出てしまった。