お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
最後まで、言わせてはもらえなかった。濡れた服のまま抱き寄せられ、拓海の胸の中に閉じ込められる。ぎゅうっときつく抱いたあと、拓海は私の顔を上向かせた。
指の背で私の頬を撫でると、「夏美」と苦し気に名前を呼ぶ。私は、それには答えるかわりに目を閉じた。
震える目蓋に、柔らかい感触が触れる。目から頬、口元と唇で優しくなぞると、拓海はそっと私に口づけた。二度、三度と触れるだけのキスを繰り返す。
息を継ごうと唇を開くと、ぬるりと生暖かい感触が隙間から滑り込んだ。
拓海の舌が歯列をなぞり、その先へと入り込む。確かめるように上顎をなぞり、舌をからめ、吸う。それまで優しく慣らすようだった動きが、徐々に激しくなり、私はすぐに立っていられなくなった。
「ベッドに行こう」
キスだけで息の上がった私は、返事をすることもできない。コクリとうなずくと、拓海は私の体を軽々と持ち上げ、彼の部屋へと運んだ。
乱暴にドアを開け、ダブルサイズのベッドに私を横たえる。ふたりとも、濡れた服を着たままだ。
「拓海、ベッドが濡れちゃう」
「かまわないよ、どうせ全部脱ぐんだ」
熱い吐息の混ざる声でそういうと、拓海は私を組み敷いた。