お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「あの、拓海……?」
「まだ寝てていいよ」
なんて言いながら、拓海は私の体に手を伸ばしてくる。私をまるで私の存在を確かめるかのように肩から背中、ヒップラインを撫でると、満足した様子で体を反転させ、私を組み敷いた。
二度寝をするつもりなんて、最初からなかったらしい。
「拓海、まだ寝るんじゃなかったの?」
「そのつもりだったんだけど」
ふっと微笑むと、また私に口づける。私の耳元に唇をよせると「そんな気、さらさらなくなっちゃった」と吐息まじりにささやいた。昨夜のできごとを思い出させる艶っぽい声に、心臓が音を立てる。
「夏美……」
「だ、だめっ」
再び顔を寄せようとした拓海を、ぐいっと押しのけた。
さっきまで、感情に駆られるまま彼と寝てしまったことをあんなに後悔していたくせに、私ったら、拓海の甘い言葉や視線に、簡単に陥落してしまう。
「嫌だった?」
「そういうんじゃなくて……」
拓海に触れられるのが、嫌なはずがない。乞われれば、喜んで彼に応えそうになる自分が不甲斐ないのだ。