お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

「えっと、ほら、シャワー浴びたりご飯食べたりしてたら、あっという間に時間が来ちゃうでしょ」

 またあんな甘い雰囲気になったりしたら、次こそ私は耐えらえない。気の削がれるようなことを言って怒られるかと思いきや、早口で捲し立てる私を見て拓海はぷっと噴き出した。

「それもそうだな。夏美が先にシャワー使って来いよ」

「……そうさせてもらうね」

 拓海に脱がされてしまったシャツをもう一度羽織り、今度こそベッドから抜け出す。拓海の部屋から出ると、私は余裕なくバスルームに飛び込んだ。


 熱いお湯に打たれながら、もう一度自分の気持ちを整理する。

 たとえ拓海が他の人を想っていても、私は彼から離れることはできない。本当は身を引くべきだということもわかっている。でもできることなら、拓海のそばにいて、忙しい拓海のことを支えてあげたい。

 心は決まった。もう憂いた顔は拓海には見せない。


「拓海―、バスルーム空いたよー」

「おう」

 明るい声で拓海を呼んで、私は朝食を作るためにキッチンに向かった。


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