お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「弁当?」
「そう、最近忙しくて、ろくに家で食べてないでしょ。外食ばかりなのもちょっと心配だなって思って」
シャワーを浴びながら、私にできることってなんだろうって考えてみた。
その結果、昨夜の綾さんからのアドバイスをもとに、休日も仕事に出かける拓海のためにお弁当を作るのはどうかなと思ったのだ。朝食を食べながら、拓海に尋ねてみる。
「今から用意するから、拓海が家を出るまでには間に合わないと思うの。お昼に事務所に持って行こうって思ってるんだけど、それでもいい――?」
返事がないなと思って拓海を見ると、箸を持ったまま固まっている。
「……やっぱり迷惑かな?」
手作りのお弁当をしかも事務所まで持っていくなんて、いかにも新婚って感じで恥ずかしいのかな。
「ごめん、よけいな気遣いだったね……」
「ちっ、違う。そうじゃなくて」
拓海は焦って立ち上がると、バンと音を立てて箸をテーブルに置いた。一呼吸置いてストンと腰を下ろし、片手で口元を覆う。
「夏美の方からそんなこと言ってくれるなんて。嬉しくてびっくりしたんだよ」
「そうなんだ……」
お弁当一つで、そんなに喜んでくれるものなの?