お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「でもいいの。夏美だってせっかくの休みなのに」
「もちろん。それに、拓海の職場もちょっと見てみたいし……」
私は拓海のプライベートな部分しか知らないから、オンのときの彼のことも知りたい。だなんて、動機が不純だったかな?
「……そっか」
なんて、私の心配は杞憂だったみたいだ。拓海は照れたように微笑むと、満足げに頷いた。
「楽しみにしてるよ。今日は休日で受付もいないと思うから、事務所に着いたら連絡して」
「わかった」
なんだか本当の新婚さんのようで面はゆい。二人とも妙に照れて、その後は無言で朝食を食べ終えた。
* * *
「そろそろ時間だな」
朝食後、リビングでニュースをチェックしていた拓海が立ち上がる。
「はーい、気をつけて。あ、こはるはダメだよ」
拓海の後を追おうとするこはるを、素早く抱き上げた。こはるはいやいやをするように体を大きくひねると、私の腕の中から脱出して部屋の中へ消えてしまった。
「相変わらず嫌われてるなあ」
「言わないでよ、これでも結構気にしてるんだから」
「仲良くしてくれよ」
歪んでいたネクタイを直す手を止め、拓海が私の頭を撫でる。