お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

 拓海の顔を見ると、昨夜のことと今朝のキスを思い出す。顔を赤くしている私を見て察したのだろう。拓海が私にからかうような視線を向けた。

「なに、そんな顔して」

「なんでもないったら」

 きっと拓海は、私をからかって面白がっているのだろう。昔から私の前ではしれっとふざけて人の悪い笑みを浮かべていることが何度かあった。

「やめてね、真昼間からそういう顔するの」

「なに言ってんの」

「空いてる部屋に夏美を押し込みたくなる」

 暑さでどうにかしちゃったんじゃないだろうか。じとっとした目で拓海を見ると、「冗談だよ」と笑って言った。


 今の今までオフィスに籠って、デスクワークをしていたのだろう。ふざける元気はあるみたいだけれど、少し疲れた表情をしている。

「お弁当持ってきたよ」

「ありがとう。わざわざ悪いな」

 やっぱり、がんばって作ってきてよかった。拓海はもっと栄養を取らないと、ハードワークすぎてそのうち倒れてしまうかもしれない。

 そう言うと、「これくらいで倒れたりしないよ」と拓海に一蹴された。これでも心配してるんだけどな……。


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