お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
本当の気持ち
冷たさを増した風が、頬を掠めた。
見上げた空はどこまでも高く、二人の門出を祝うかのように晴れ渡っている。
チャペルのベルが鳴り響いて、中から花婿と花嫁が姿を現した。
小春日和の今日は、湊人さんと佐奈さんの結婚式だ。私と拓海は夫婦として彼らの式に参加している。正式な夫婦として人前に立つのは、おそらくこれが最初で最後。
フラワーシャワーの下を、幸せそうな二人が歩いて行く。
純白のウェディングドレスに身を包んだ佐奈さんは、物語の中から抜け出してきたヒロインのように美しい。
……拓海は今、どんな気持ちで彼女を見ているのだろう。
見てみたい、けれど拓海の想いを見せつけられるのが怖い。臆病な私は、ずっと湊人さんと佐奈さんの姿を追っていた。
二人が階段を降りきると、その周りに式に参列している女性陣が集まって来る。今からブーケトスが行われるのだ。
「残念、夏美はもう参加できないな」
そう言って、拓海が私の左手を取る。拓海が触れた場所には、彼にもらったシルバーのリングがきらめいていた。