お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「おかげで兄貴と佐奈の結婚話が出ても、話が一向に進まなくて。兄貴の俺への怒りは収まらないし、佐奈の気持ちには全然気づかないしで、力を貸してほしいって佐奈に泣きつかれたんだよ。あの日はたまたまあの近くで佐奈の用事があったから、ついでに送ってやって、その間に話をしてたんだ」
「そんなことがあったんだ……」
うちに来た時の佐奈さんはあんなに幸せそうにしていたのに、結婚式までにそんな紆余曲折があったなんて。
「でもそんなに揉めたのに、どうやって拓海はふたりを後押ししたの?」
私が訊くと、拓海は得意げに鼻を鳴らした。
「簡単だよ。兄貴にそこまで俺に対して怒るのは、なぜなんだって問いかけたんだ」
「湊人さんが怒った理由って……そっか、そういうこと!」
湊人さんも、佐奈さんのことを心から大切に想っていた。だから拓海が佐奈さんのことを傷つけたと思って、あんなに腹を立てたんだ。
「そこからはまあ、周囲が驚くほどとんとん拍子で話が進んで……」
湊人さんが佐奈さんへの想いを自覚してからの溺愛ぶりは凄まじく、見ているこちらが照れてしまうほどだったらしい。
いろいろな謎が一気に解けて、力が抜けてしまう。